硝子の騎士

□胎動
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時間は、少し遡る。

白いカーテン、白い壁、白い床、白いシーツ…。
白ばかりの風景は、確かに清潔ではあるが、一抹の不安を感じるのは何故だろう。
…そして、その不安は、いまだこんこんと眠り続けている二人―星矢と瞬をみると、不意に増大する。
白い部屋の中に、金髪の少年がいた。
氷河。
眠り続けている二人とは、共に聖戦を生き抜いた仲間であり兄弟。
その瞳は、眠り続ける弟達を見つめる…まるで、本当の兄弟のような。
…否。
彼らは確かに兄弟である。
母は違えど、父は同じ…半分血の繋がった。
しかして、その絆は同腹の兄弟以上のものであろう。
共に戦ってきた仲間として、兄弟として…。
女神の、聖闘士として。
「…瞬…星矢…」
弟達の名をつむぐ声は、穏やかだ。
不安はある。しかし、信じている。
それ故の、穏やかさだった。
『星矢はハーデスに胸を貫かれた時の肉体的なダメージが…瞬はハーデスに憑衣された時の精神的ダメージが…それぞれ大きいんだろう…。』
五老峰に一時帰還する前に、紫龍がそう言っていた。
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