リクエスト

□大人の絵本
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今日も五舎看守室では主任である悟空猿門が莫大な書類と戦っていた。
他の看守も自分の持ち場で仕事をしているようで、現在看守室には猿門しかいなかった。

「あ?一枚足りねえ」
書類が一枚足りないことに気がつき机の上を探る。
だが、もとから散らかっている机の上が更に散らかるだけで目的のものは見つからない。
机の引き出しを片っ端から開けて探していた時、猿門の目にあるものが飛び込んできた。
「あの野郎っ」
例の大人の絵本である。
顔を真っ赤にしてその本を投げ捨てる猿門。

そこへなにも知らない猪里が運悪く戻ってきた。
「主任、なにやってんですか?」
「猪里テメエっ」
何故か怒りに震える猿門と床に落ちている自身の本を交互に見比べ
「げっ…ハハ、見つけちゃいました?」
焦ったようにひきつった笑いを浮かべる。
「覚悟はできてんだろうな」
「ちょっ…待てっ!主任だって男なんだから分かるだろっ」
今にも殴りかかってきそうな猿門の腕を掴みながら咄嗟にでた言葉。

その言葉に猿門の表情が歪む。
「……俺の事好きとか言ってるくせに、やっぱり女が良いんじゃねえかっ」
「へ?主任、それってヤキモチ?」
「なっ…ちがっ」
猪里にそう指摘され真っ赤になった猿門が掴まれた腕を慌てて離そうとする前に、猪里がその身体を引き寄せた。
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