リクエスト

□本気?冗談?
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「最近のお猿ちゃんってさぁ、なんか可愛くない?」
休憩室でいつものようにアイスを舐めている猿門を見ながら発せられたその言葉は、隣で聞いていたハジメに不穏な空気を纏わせる。
あの時以来やけに三鶴が猿門に構うようになり、ハジメが少しばかり焦りを感じていた矢先の事だった。
「なにが言いたい?」
「ん〜?なんだろうね」
掴み所のない返答はいつもの事だ。
それ以上何も言わないハジメを気にした様子もなく三鶴はその場所から離れていく。


「お猿ちゃん、そのアイス美味しい?」
気がつけば猿門の所まで移動していた三鶴が猿門のすぐ隣に座る。
「うん」
「じゃあ一口頂戴?」
「ん」
今まで通りの三鶴の態度に警戒心などまるで抱かず食べかけのアイスを差し出す猿門。
三鶴は猿門のアイスを持った手を引っ張るとその濡れた唇を舐めとった。
「!?」
「ごちそうさま」
驚き固まる猿門にニンマリと笑う三鶴。

「なにしてんだお前ら…」
地を這うような低い声に猿門の肩が跳ねる。
ハジメの表情に猿門は自分の顔からだんだん血の気が引いていくのを感じた。
「だってお猿ちゃんが可愛いから」
「コイツは俺んだって言っただろうが。お前もなに簡単にキスされてんだ?…なあ?」
本気とも冗談ともとれる口調にハジメが苛立ったように三鶴を睨んだ後、猿門の顎を掴んだ。
「分かってるよな?」
ニヤリと嗤う。

簡単に許してくれそうにないハジメに猿門は泣きそうに顔を歪めたのだった。
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