小説2
□ハッピーハロウィン
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今日も今日とて倉庫でひとり業務に追われていると、突如目の前に白い何かが現れた。
「うわっ!?……って、誰だよ!?」
白い何か……よく見るとソレはただのシーツを被った人間で。そんな巫山戯た真似をしてくるのは、きっと九力だと思ったが、だけどソレは九力よりもややでかい。
他にこんなことをする奴って…?
そんな考えに思考を働かせていると、
「俺だよ俺♪」
実に楽しそうな恋人の声が、白い物体の中から聞こえた。
「主任っ?何やってんですか…」
「ハロウィンだからおばけ?」
まさかのハロウィン。しかもこの白い物体はおばけらしい…。
「ああ」
なんだろう。とにかく可愛い。
「コレ捲ってみろw」
キキキッといつもの笑い声に、言われるままシーツを剥ぐと
「ฅ( •ω• ฅ)ガオ-」
「!?」
「あざとっ」
思わず声に出してしまった。
だって、まさかのにゃんこポーズ。
いや、シーツの下から現れた格好は猫じゃなく、狼なんだが。
ふさふさと揺れる尻尾とふわふわの耳が可愛い狼の着ぐるみ。
着ぐるみって…子どもみたいだし、指を曲げガオガオ言ってる姿は猫みたいに可愛くて、楽しそうに弧を描く唇から見える牙も…とにかくあざといとしか言えない可愛さである。
「おい、あざとってなんだ?」
思わずこぼれ出た声に、不思議そうに大きな目をこちらに向けてくる。
「なんでもないですよ。その格好、可愛いですね」
「可愛いって言うな」
即座に反論された。だが可愛いものは可愛い。
「だって可愛いし」
「……」
「ていうかそれ見せに来てくれたんですか?」
「ちげーよ。あれだ、トリックオアトリートしにきた」
「お菓子か悪戯かってヤツ?」
「そうだ!」
自信満々で腰に手を当てる主任。
「あー。でも俺、お菓子持ってないですよ」
だって俺仕事中だし。
「( ˘•ω•˘ )」
なんだその可愛い顔は…
「そんなあからさまにガッカリしないで下さい(笑)…ってことで」
にんまりと笑う俺。
「?」
「イタズラしてくださいw」
ふわふわの着ぐるみを纏う細腰を引き寄せ、腕の中に抱き込んだ。
「へ?」
「お菓子かイタズラか選べって言ったんでしょ?」
「俺、お菓子がいい」
「だから無いんですって」
「……お菓子」
可愛いオオカミが腕の中にいるので上機嫌な俺と、どこか不安そうな主任。
「後でアイスあげますから」
「…絶対だぞ」
「だから今は、俺と遊んでくださいね?」
「バカ」
甘いお菓子より、甘いキスを
END