小説2

□チョコレートを贈る日
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明日はバレンタインだ。
そう、あの主任と付き合って初めてのバレンタイン。

ずっと好きだったからあの人から告白された時は驚いた。驚きすぎて「お、おれもずっと貴方が好きでした…!」と声量の調整もできず、更に言うと声も裏返っていた。


そんな告白からはや数ヶ月。
キスはした。うん、軽く触れるだけのバードキスだけど、、、
だってあの人キスしたらキュッて目瞑るし、口もキツく引き結んじゃうから舌が入れられない。否、1回だけしたことはある。

「あの…舌入れてもいいですか?」
と、恐る恐る聞いてみたら
「した?」
なんてきょとん顔で可愛く答える主任。
「くち、開けてください…」
「あー」
あー、って…子どもみたいな声を出しながら口を開ける。

あんたホントに27ですか?

そんなことを思いながら唇を重ね、舌を差し入れた。
ぬるり、と上顎をひと舐めしてから主任の舌に自身の舌を絡めると…


ビクゥッ

大きく震える身体。
されるがままだった主任が、俺の肩を押し返してきた。
だけど今更やめてやる気にはなれず…細い腰を更に引き寄せ熱い口内を堪能する。

「んっ…ふぅ…う、んんっ…は、…やめっ…れこの馬鹿!!」
ドンッと強く胸を叩かれて暴言を吐かれ、ムードもへったくれもない。
仕方なくキスを止め、主任から離れる。

「…そんな嫌でした?」
「いやだった!」
そう答えた主任は涙目で。
「そう、ですか。あの…ひとつだけ聞いても?」
「なんだよ」
「主任ってディープキスしたことないんですか?」

「でぃーぷきす?」
幼い口調で反対に問いかけてくる。

「今やった舌入れるキスのことです」
「ない…っていうか、普通のキスだってお前が初めてだよ!」

マジっすか…


「俺とキスするの嫌?」
「や、じゃないけど。でも…さっきみたいのはヤダ」
「なんでです?」
「舌がうにゅうにゅして気持ち悪いから」
ズバッとそう言ってのけられた。

「……」
「でも、いつものは嫌いじゃないぞ?」
俺が無言になったことに気を使ったのか、そんな爆弾を落としてくる。

「じゃあもっといっぱい いつものキスしましょうね」
そう言うと、主任は小さく頷いた。



と、ここまで説明したところで分かると思うが、俺と主任は未だに清い中である。

軽いキスは好きらしい。
あと、抱きしめたり、くっついたり、そういうスキンシップ的なのも好きみたいだ。



そんなわけで明日は、折角の恋人同士のイベント。
チャンスを逃さないわけがなかった。
主任がチョコレートを好きなのは調査済みだ。

なので、只今絶賛手作りチョコレート制作中である。


そこにやってきたある人物。

「なにやってんの?」

誘ったわけじゃないのに突然部屋に現れ、なんでもないように話しかけてくる男。
そう、九力大仙だ。
なんでコイツは当前のように勝手に俺の部屋に入ってくるんだ?
連絡どころか呼び鈴さえ鳴らなかったんだが…まあ、コイツら(大仙)相手だと俺も似たようなもんか。


てなわけで、
「見てわかんだろ、チョコレート作ってる」
「なんで?」
「…明日バレンタインだろ」
なんでコイツはこんな察しが悪いんだ?
呆れたようなため息付きで答えてやる。

「ああ、そっか。ふーんwじゃあボクも八力に作ろwねぇ、材料わけて?」

はいきたー
なんでコイツはこんな我儘がまかり通ると思ってんだろうな?あれか、八力が甘やかすからか?絶対そうだ。

「は?ダメに決まってんだろふざけんな」

「は?」

「は?じゃねーわ」

「なんで?」

「なんでもだよ」

俺は間違ってない。

「ふーん?そんなこと言っていいんだ?」
ニヤニヤと意地の悪い笑顔。これはなにかやばい事を企んでる時の顔だ。

面倒くせぇな…無視するか?


そう思っていたその時…

「猪里さんにイイモノ貰ったから六力にも分けてあげようと思ったんだけどなー?」
より一層ニヤつく九力。
「……なんだよ」
イイモノという気になるキーワードにあっさりと引っかかってしまう俺。

「なんだと思う?」
勿体ぶった九力の言葉に答えず、視線だけで先を促す。

「しょうがないなぁwコレだよコレ。ビ・ヤ・ク♡」

「は?」

は?
なんだって?
びやく?

「だからー。媚薬だってw貰ったはいいけどどうやってアイツに飲ませよっかなー?って思ってたんだよ。でさ?チョコに混ぜたらよくない?どうせ主任にあげるんでしょ?えっちな主任が見れるチャンス到来じゃんww」
「……」
「ろくりき?」
「…っ!マジか、やべぇ…なにそれお前天才かよ?」


なんだその素敵アイテムは!?

未だキスより先に進めないこの状況。
そんなところに偶然やってきた九力と媚薬。
これは媚薬を使って主任をメロメロにしちゃえっていう神様のお導きなんじゃ…

「でしょー♡で、どうするの?」
「よし、しゃあねぇからお前の分も作ってやる!だからやるぞ九力!」
「(。・ω・。)ノ yes,sir♪」


んなわけで九力とふたり、怪しい媚薬入りチョコ作りが始まった。

「てかさ?お前は八力に食わせるんだろ?」
「そうだよ」
「アイツそんな淡白なの?」
「んー?別にそういうわけじゃないけど…恥ずかしがって声とかあんま出してくんないんだよねー」
「へ?待って、お前らどっちがどっち?」
「え?ボクが上だけど」
「は?え?お前が女役じゃなくて?」
「うん」
「マジ?」
「マジ」


ってな感じの会話をしながら作り終えたチョコを、予め用意してた箱に入れる。

後は主任のところに持っていくだけだ。

まず主任がチョコを食べて、俺が主任を食べる。うん、これで流れはオッケーだ。


そして俺達はお互いの恋人の部屋に向かった。



♡結果は4人だけの秘密♡



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