小説2

□イタズラ
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さわさわ

モミモミ


「であるからして…」

しんとした室内に看守長の凛とした声が響いていた。
書類片手に今日の議題の説明をしている看守長と、各々の席に着き、静かに話を聞いている主任看守の面々。

ただ今主任会議の真っ最中である。


そんな中、無遠慮に己の足に触れる手のひらは持ち主と同じく時と場所なんて気にしておらず、今も尚際どい部分を行ったり来たり。
まあそのイタズラな手の正体はと言うと、やはりと言うかなんと言うか恋人である一声三鶴の物なのだが…。

(やめろっ)

小さな声で注意をした所で聞き入れてくれる相手ではないのは分かっている。
だからコイツの隣は嫌なんだ。
いつもなら態々隣になんて座ってやらない。こうなることが分かっているからだ。
しかし今日は最悪なことに、此処しか空いていなかった。
滅茶苦茶警戒しつつ隣に座った俺に対し、へらへらと笑いながら手を振る三鶴。
「絶対変なことすんなよ!」と釘を刺したのは未だ真新しい記憶である。

それなのに会議が始まれば、さも当然と言うように己の足の上に置かれた三鶴の手。意識しつつ無視を決め込んでいたが、その手は期待を裏切りゆっくりと動き始めた。


さわさわモミモミと太股から際どい股の間を蠢く手に、ゾクゾクとした何かが背筋を駆け上がる。
こんな時に感じてはいけない感覚に息を飲み、その意趣返しと言うように素知らぬ顔をする男の手の甲を力いっぱい抓ってやる。

「ひっ!?」

しかし驚きに声をあげたのは三鶴ではなく、俺の方だった。
あろうことか三鶴は俺の股間を思いっ切り鷲掴みにしたのだ。
ビクリと肩を跳ねさせ、驚愕のままその手を上から掴むも、そのままグニグニと揉みこまれてしまっては堪ったものではない。

「悟空主任?…どうかしたのか?」
静かな部屋にいきなり響いた俺の声に、当然この場にいる面子は訝しげな視線を向けてくる。
看守長の気遣わしげな問いに対し、勢いよく頭を振った俺は「なんでもありません!」と、殆ど叫びに近い声でそう答えるしかなかった。

「そうか…以後気をつけるように」
軽い注意を受けるも、それに反応する余裕はなく…その間も止まらない刺激に頭の中はぐちゃぐちゃになりそうだった。

じわりと滲み出した涙で、自然と潤み出す視界。
ガクガクと震える指で、必死にその手を引き剥がそうと引っ張る。
しかし全く力の入っていない抵抗などものともせず、三鶴の長い食指は大胆に己の性感帯を苛めてくる。
「…ふっ…んん…」
俺に出来ることと言えば、今にも漏れそうになる声を唇を噛み締め耐えることだけだった。

ーーーーーーーーーー

未だ続く会議の最中。どれだけ時間が経っているのかなど、快楽に支配された頭は遠に考えることを放棄していた。
三鶴により執拗に弄られたソコは、ズボン越しでも分かる程はしたなく濡れ、今も尚蜜を溢れさせている。
下着の中で響くクチュリと湿った粘着質な音も、誰かに聞こえてしまうのではと考える余裕もなくて…更なる刺激を欲しがるように無意識に三鶴の手に自身を押し付ける。

「ねぇ、会議中だって分かってる?」
誰にも聞かれる事のないように、真っ赤に染まる耳に直接注がれる声。

「直接触ってないのにこんなにして…ほんと、」

【淫乱】

その言葉は、拙い

理解した途端、途方もない快感が爪先から脳にまで達する

「ーーーッ!?」

声にならない声をあげ、ビクビクと痙攣する身体。次いで下着の中に放たれる熱…その声で、言葉だけで、俺は上り詰めていたのだった。



「今日の会議はここまでとする。ご苦労だったな」

ボンヤリとした頭に響く看守長の声。
幸いなことに誰にも気付かれず、その日の会議は終わりを告げた。
否、何人かの看守には気づかれていたのかもしれない。

「おっさるちゃんw大丈夫?」
会議室から全て看守が去った後、事の元凶である悪魔のような恋人は、いつもの笑顔を向けながら俺の肩を抱き寄せてきた。
「……最悪だ」
吐き捨てるように呟きキツく睨みつけてみても全く怯むこともなく、むしろ…
「ねぇ、まだまだ足りないでしょ?俺ちゃんの部屋行こっか♡」

楽しそうなコイツを煽るだけなのだ。

未だ体内に燻る熱と、下肢を濡らす不快感に、結局は全て目の前の男の望み通りになってしまう。
「歩けねぇんだよ…お前が運びやがれ!」
せめてもの嫌がらせに、全体重をかけて抱きついてやった。


おしまい

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