小説2

□可愛い恋人
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時間はちょうど9時を回った頃だろうか?

一声三鶴の部屋では…

長い四肢をだらりと投げ出し、まるで自室であるかのように恋人のベッドの上で寛ぐ猿門と、傍らの椅子に座り真剣な顔で何やら考え事をしている様子の三鶴の姿があった。


(そろそろ頃合じゃないかなぁ?)

そう、三鶴の考えている事とは恋人同士がする行為の事である。

告白→キス→デート→お泊まり
とくれば残る行為はセックスだと思う。

無論三鶴はやる気満々、準備満タンだ。


だがしかし、付き合って早々に押し倒した己を、本気で蹴り飛ばし、あまつさえ1週間も一切口を聞いてくれないという拷問のような所業を行ったこの純新無垢な恋人を、一体全体どんな風に誘えばいいのか…

まったく答えが見つからない。


猿門が三鶴の告白を受け入れたあの日から、今日で四ヶ月が経とうとしていた。

まさかこんな長期間に渡って、禁欲生活を強いられる羽目になるなんて…。


そんなこんなで、己はもう限界である。


「ねぇ、お猿ちゃん」
「ん?」
名前を呼ぶと、今にも眠ってしまいそうな猿門が、視線だけをこちらに向ける。
三鶴は椅子から立ち上がると、猿門のすぐ隣に腰掛けた。

そして、

「好きだよ」

しっかりと目と目を合わせていつもより幾分低めの声で囁き、未だ現状を理解していないだろう猿門の上に覆いかぶさった。

「はぁっ?お前なにしてっ…」
それ以上言葉を紡ぐ前に、その小さな唇を塞ぐ。

「…んっ…やめっ…」

「んんぅっ…ふ…っ…はぁ……」

胸を押し返す力が、ねちっこいキスに溶かされ、力なく服を掴むだけになった頃。漸く解放してやる。

絡まったどちらのものか分からない唾液が糸を引き、ぷつりと途切れた。

とろん、とキスの余韻で潤んだグリーンアップルの瞳が戸惑いがちにこちらを見上げてくる。

「ダメ…俺ちゃんもう限界…」

それは、己の脆い理性の糸が、一瞬で焼けきれた瞬間だった。
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