*物語*
□日曜日
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日曜日。
学校はお休み。
ザー…バチバチ
昼過ぎから降り始めた雨は台風を思わせるほど強く、時々窓ガラスに激しく打ち付ける。
ガラスの向こうは雨が波打ち、すぐ先の庭も見えない。強く吹く風にガラスが鳴る。
(すごい雨だな〜。窓がガタガタいってる…)
部屋でお茶を飲みながら、本のページをめくった。
空は厚い雲が覆っていて、まだ夕方だというのに陽がなく暗い。
今日は皆出かけていて、いつも賑やかな家の中が、急に広く寂しく感じる。
広い家に、ぽつんと1人。
「……」
何となく窓を眺めていると、携帯からメールの着信をつげる音がした。
普段洋楽は聴かないけど、太一さんが好きって言っていたからダウンロードした曲。今では私の好きな曲の1つになっている。
メールを開くと、日向君からだった。
『翼君がまだ映画を観るって言うから遅くなります(;_;)あと2つ観たいのがあるんだって…( ´△`)でも2つは見れないよ〜(>_<)』
今日から始まる映画を「誰よりも早く観たい」と、翼君が日向君を無理矢理連れ出していた。
(またかぁ…)
さっきから、メールや電話で「遅くなります」という連絡ばかりが続いていた。この雨を理由に、本屋に寄ってくるとか、お茶を飲んでくるとか、パチンコとか…それぞれがそれぞれの時間を楽しんでいるみたいだった。
(私は何をしようかな…)
宿題も終わったし、英語の予習も終わったし、テレビは好きな番組もやってないからつまらないし。
(…太一さんに逢いたいなぁ…)
メールの着信を聞いて、太一さんが恋しくなる。
(逢いに行きたいけど、夕飯の用意頼まれてるし…)
今日はお京さんも朝から外出中で、夕飯の用意を私がすることになっている。とはいっても、下ごしらえは済んでいて、あとは簡単なんだけど。
朝から出かける用意と夕飯の用意を同時にこなす、お京さんってすごいなぁ。
そんなことを考えながら、雑誌を何となくながめて見たけど、さっきから胸の当たりがキュッとして、だるい。何にもしたくない。
「逢いたいなぁ」
今は、太一さんに逢いたい気持ちでいっぱい。
立ち上がって、ベットに横になる。ベットには太一さん用に枕がもうひとつ。
枕を手にとると太一さんのにおいがした。
枕をぎゅっと抱きしめると、落ち着いてきて…うとうとと眠ってしまった。