*物語*
□同じように…
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学校帰りの夕方。
太一さんの屋台を片付けて、自宅までの道を歩いて帰る。
約束した訳でもないのに、それが日課。
家の中でも一緒にいるけど、家の外で、こうして並んで歩くのも嬉しい。
毎日、毎日、何でもない話題。
あそこのネコが子供を産んだ…とか、
学校で翼くんが…とか、
今日のお弁当のおかずがおいしかった…とか。
太一さんとお話するだけで、この『何でもないこと』が、『とても大切な時間』にかわる。
(きっと、別の誰かと話しても、こんな気持ちにはならないんだろうなぁ)
いつもの優しい笑顔でお話をする太一さんを、下から眺めながら、そんなことを思った。
太一さんといると、胸がドキドキするけど、このドキドキは太一さんみたいに優しい。
(こんな素敵な人が、わたしのことも好きでいてくれてるなんて…。ウソみたい。わたしなんて太一さんからみたら子供なのになぁ…)
一緒にいて楽しい気持ちのはしっこに、いつもある小さな悲しい気持ち。
そんな気持ちには気付かないふりをして…楽しい会話に戻った時、
「それでそのネコがね…」「あれ?…森島くん?」
商店街のノラネコのはなしの途中、知らない女の人から声をかけられた。
かわいらしい感じだけど、どこかに大人っぽさのある女の人。
ゆったりしたワンピース。お腹のあたりが少し大きい…?
「もしかして中学校の…」「そうそう!森島くん変わらないね〜!」
かわいらしい感じとは反対に、大きな笑い声で笑う。
太一さんも「懐かしいなぁ」と楽しそうに話す。
この人は、太一さんと中学校が同じで同級生なんだそう。旦那さんの実家に遊びに来ていて…
「もう少しで6ヶ月なの」
と、幸せそうにお腹を撫でた。
(なんだか大人な会話…)
太一さんの同級生は、もうパパやママになる人もいるんだ。
誰も悪くないのに傷つくな〜。もやもやする。
さっき気付かないふりをした気持ちが、どんどん大きくなる。
太一さんの陰で居場所がなくなったわたしは、用もないのに携帯電話を取り出した。
こんな気持ちになったりするのが子供なんだろうな…
「この可愛い子は妹さん?」
ドキンと心臓が跳ねた。
ドキドキドキドキする。
さっきのドキドキとは全然違う。全然優しくないドキドキ。目の周りが熱くなって、吐き気がして、耳がつまったように周りの音が遠くなる。
どこを見ていいのかわからず、うつむいてしまった。
(やだ。聞きたくない…)
太一さんが何と答えるのか。周りには、太一さんとわたしはどう見えてる?彼女にはやっぱり見えないよね…
涙がこぼれそうになった時、
ポンポン
太一さんはいつものようにわたしの頭を優しくたたいてから、
「この人は、俺の大事な彼女だよ」
と言い、手をつないでくれた。
また、ドキンと胸がなった。今度はぎゅうっと締め付けるようなドキドキ。
今度は嬉しくて泣きそうになりながら、太一さんの手をぎゅっと握った。