10/20の日記
10:03
あくまでもフィクション3
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咲子の部署は業務を縮小し、変化の無い業務内容となった。
仕事内容は部下の指導と管理。
彼らは一応のことを身に付けるとこの部署をあっさり去って行く。
はじめは置いてきぼりを食うような寂しさと
焦りに翻弄された。
それにも今は慣れた。
気がつくと彼らは娘の年齢に近い。
巣立ちを手伝うのも仕事だった。
かつて若かった咲子は先輩を「お局」「オヤジ」と揶揄したが
若い彼らはそんな風に咲子を扱わない。
「お母さんのようだ」と屈託無く言ったりする。
慕われ、信頼され、そして忘れ去られて行く。
彼らの進む世界は咲子の時代よりも苛烈なのだ。
それは「近年最大の台風」が来ると云われた、ある夕方のことだった。
いつもより早く退社した咲子は一人の見知った顔に気付いた。
かつての同級生だった。
話が合わないといつしか疎遠になっていた彼女は咲子の視線に気づき、見返してきたが、
戸惑うように、視線を外した。
その目ははっきりとこう言っていた。
「誰?知らない人だけど…」
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