02/15の日記
14:27
あくまでもフィクション
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咲子は今年50になった。
夫は公務員、一人娘は大学生。
咲子も今年で大手企業を勤続30年目になる。
まだ女子社員が「うちの女の子」呼ばわりされていた頃にこの会社に入社した。
当時は総合職になるつもりも無く、給料を貰えて楽しく過ごせればいいと思っていた。
よく働き、よく遊ぶ。
よく遊ぶためによく働くだったかもしれない。
仕事に慣れると遊ぶことが楽しかった。
同僚も皆、派手に遊んでいたが咲子は特に目立っていた。
上司に「不良社員」と呼ばれるのは咲子にとっては勲章のようなものだった。
仕事は人並み以上に出来たから。
何人かの男性社員にも言い寄られて付き合ってみたこともある。
彼らと遊ぶことは楽しかったが、そのうち本社に戻ることになったり、海外転勤が決まると手近な女子社員や学生時代の彼女と急いで結婚してしまった。
咲子は結婚退職よりもこのまま勤めて自分のことは自分でやってみたいと思うようになっていた。
父に気を使いお茶の一杯も外で飲めない母のようにはなりたく無かった。
その頃、咲子を「不良娘」と呼んで可愛がってくれた上司が「総合職になってみないか」と言ってくれた。
四大卒ではなく短大卒の総合職は当時はこの会社にはいなかった。
「お前なら出来る」
咲子は上司の期待以上だった。
総合職になった翌年に結婚した。相手は地方公務員の優しい辛抱強い男だった。
一番好きだった学生時代の恋人とは遂に一緒にはなれなかったが、これから生活していくには一番ふさわしい相手は彼だけだと思った。
何よりも彼は父のように「女のくせに」だとか「所詮女」とは言わない。
思っていても言わないで欲しい。
夫は決して言わない。
ただ穏やかに笑っている。
女のやることなどかわいいもんだと言いたげに。
だから咲子も言わない。
「これからは好きにやる」とは。
※続きます…
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