創作小説箱
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ゆっくり、ゆっくりと意識が浮上していく。
そんな中で、優しく差し込む光が楓の思考を余計にクリアにさせた。
「ん…」
ゆっくりと瞼をあげ、光に目が慣れるまでまばたきを繰り返す。
自分にかかっている薄い布団を押し下げて、楓は大きく伸びをした。
「うぅ〜、ん…」
起き上がろうと体を起こす。
だが、ベッドに縛り付けられたかのように思うとおり動けなかった。
「目が覚めましたか?」
「え?」
近くで声がしたかと思い、首を後ろにのけぞらす。
すると、どこかで見覚えのある顔が優しげに微笑んでいた。
「あなたは…?っていうか、ここどこ…?」
てっきり自分の部屋だと思っていたのだが、部屋を見回してみると自分の部屋と全く印象が違っていた。
「おはようございます。覚えてらっしゃいませんか?」
「何を…?」
「昨晩、倒れてしまわれたこと。」
…昨晩?
昨晩、俺はいったい何をしていたんだろう?
留学国から帰国するといったあの人、デートをすると約束した。
だけど――
来なかった。
きっと、最初から俺に会う気なんてなかったんだろうか?
それから、そう。
この人と会ったんだ…それから……