創作小説箱

□泣き虫ピエロ
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雨が降る

ただ、街灯の明かりだけが照らしている公園に一人、降りしきる雨に傘もささずに立ち尽くしている男が居た。

雨粒は、男の髪や頬、服などを濡らしていた。

何故、男が一人。
雨に降られ立ち尽くしているのだろうか?



――それは、数日前にさかのぼる。――

「えっ!!本当に久しぶりに会えるのっ!?」
歓声を上げて喜ぶのは、先程立ち尽くしていた男。

名は佐伯 楓。

『嗚呼、学校も休みに入るし。それに、俺も久しぶりに楓の顔が見たいからな。』
電話で話しているのは友人。

ではない。

彼は普通ではありえない関係にある。
つまり

―恋人だ―

彼とはそれまで海外留学をしていたため、会えない日々が続いていた。

だが、久しぶりに日本に帰ってくるというのだ。

「本当に、会うの久しぶりだよね。」
『そうだな…、あそうだ。楓…』

「ん?」

名を呼ばれ、電話越しに楓は首を傾げた。
「どうした?」

『――、いや…何でも無いんだ…、それに、その日になれば分かることだし。』

一体何を言おうとしているのだろうか?
疑問に思いながらも、会う日の日程を決めて電話を切った。

「本当に会えるんだ………」
高鳴る胸を手で押さえ一人異国にいる恋人に思いをはせた楓だった――
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