* hatsukoi *

□木佐翔太さんの悩み事
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とりあえず雪名に『これから帰る』とだけの短いメールを送ってみた。

それから数秒後、いつものことだが雪名からの返事はすぐに返ってきて。


『マジっすか! 久しぶりに木佐さん会えるの、楽しみにしてますね!!』

・・・なんて。 メールだけでも雪名の気持ちが十分に伝わってきた。


嬉しさに浸っていると、ピリリ、メール受信を知らせる音が鳴り響く。・・・また雪名だ。

用件は一度に送ってこいっていつも言ってるだろが!


タイトルは・・・、『それから』?


『早く会いたいです。木佐さんが帰ってきたら、いっぱいしましょうね!

あと、今日何か食べたいものありますか?』


・・・数回に分けて送られてくるときの最後のメールには、基本的に俺を赤面させる内容になっているらしい。


つーか、この内容と晩ご飯のリクエストを一緒に送るとはどーゆーことだ。


心の中でつっこみ、『ハンバーグ』とだけ返し携帯を閉じる。


本当は『今すぐ美肌になれるモノ』とでも送ってやろうかとも思ったが、それは内緒です。








結局家に帰ってこれたのは、深夜0時を過ぎようとした頃だった。

会いたいような会いたくないような、微妙な感情が俺の足取りを重くする。


雪名はもう寝てしまっただろうか。

もしそうだったら、起こしたら悪いし・・・静かに家に入らないと。


極力音を立てないようにドアノブを回し、ゆっくりとドアを開けると・・・


「木佐さん、おかえりなさい!!」

「っゅゅっ、雪、名・・・!?」


・・・玄関先でスタンバイしていたと思われる雪名が、いきなり抱きついてきた。


「・・・ただいま・・・、もしかして、ずっと待っててくれた・・・?

「ハイ、メールもらったときからずっと! 木佐さんに会えるの、もうホント楽しみで楽しみで・・・あ、スイマセン。俺一人ではしゃいじゃって。

木佐さん、あんまり寝てなさそうだし、疲れてますよね・・・シャワーでも浴びてきて下さい」

「あ、うん・・・ありがと。」


嬉しかった。

抱きしめられたときの圧迫感が。 気遣ってくれる優しい声が。 自分を求めてくれる雪名の、本当に嬉しそうな笑顔が。

いつもなら、雪名の気持ちに応えることができるのに、今は応えることができそうにない。


今の自分に、自信が持てないから?


「木佐さんがお風呂入ってる間に晩ご飯温め直しますね。今日はリクエストどおり、気合い入れてハンバーグ作ったんで・・・

・・・あれ、木佐さん。どうかしました?」


なんでコイツは、俺の些細な異変にすぐ気付くんだろう。

そーゆートコが、そーゆーオマエだから、好きなんだけどね。




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