* hatsukoi *

□きみにしかえし。
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温かな鍋とコタツに、可愛い笑顔の愛娘。

そして、隣に愛しの嫁。………もとい、嫁"みたい"な好きな奴。

まさに、家族団欒のひととき。―――なのに、どうしてこうなった?


程よい暖かさが心地よいのか、ウサギ柄のコタツの側で、ソラ太がくぁ…と大あくびをした。











この季節は、クソ寒い中歩き回らなければいけない営業という職についている奴にとって、『ツライ』以外の何者でもない。

なので、昼夜問わず一分一秒でも長く暖をとっておきたいものだ。

せっかく今夜は冷えた体を温めるのに最適な冬の定番メニュー・鍋だったのだから、もっとゆっくり味わいたかった。






「パパ、お兄ちゃん、おいしいねっ!」

蒸気で頬をほんのりと紅に色付けた日和の笑顔がはじける。

「みんなで食べると余計おいしく感じちゃうなぁ。ひよ、幸せーっ!」

「ひよは可愛いこと言うな、全く。俺も幸せだわ。なぁ、横澤?」


「あ、あぁ…。ぅあ………っ」


また、始まりやがった。


「お兄ちゃん……どしたの?ベロ火傷しちゃった?」

「いや、大丈夫だ。してな…い……っ」

「そぉ?ならいいけどー…」



クソ、コイツ…鍋くらい落ち着いて食わせろ!

怒りでわななく体を、日和がいるため何とか抑え込む。

俺の股関に何度も何度も悪質な悪戯を繰り返してくるつま先の主をギロリと睨みつけた。

その余裕しゃくしゃくなにやけ顔が……………気に入らん!屈辱だ!!




事態は、時間を遡ること数分前。




それは、今年一番の寒さを記録した日の夜の事。


初雪が降らないのが不思議なほどの冷たい冬の空気に身も心も冷やされて帰宅した桐嶋は、自宅の扉を開けた途端に暖かさに包まれる。


「パパ、おかえりぃ。」

父親の帰宅を迎えてくれる愛娘・ひよの声。

「桐嶋さん、遅いですよ!仕事はさっさと片付て帰って来ないと!」

同僚の段取りの悪さを駄目だしする恋人・隆史の声。

どちらもそれなりに暖かく、桐嶋の疲れた体と心を癒してくれる。

冷め切った体はぜひとも『人肌』ならぬ『隆史肌』で温めて貰いたい所だが、今それを言えば怒り狂った横澤によって、自分の体を永遠に冷たいままにされそうだから自粛する。


「何、ジロジロ見てんだよ?気持ち悪い。」

「いや・・・今日は鍋なんだなーって思って。」

桐嶋の目の前を通り過ぎる横澤の手には、鍋の具材と思しき白菜や豆腐が盛られたザルが持たれていて、テーブルに目線を変えれば予想通り鍋がぐつぐつと煮立っていた。

しかも、そのテーブルはいつの間にかコタツへと変化しているではないか。

「おー!コタツじゃねぇか。どうしたんだ?」

記憶をさかのぼっても、桐嶋家では毎年コタツなど登場した年は無い。

毎年エアコンとホットカーペットで寒さをしのいでいる者としてはコタツの存在はかなりありがたい。

「お兄ちゃんとお店に買いに行ったんだよ。このウサギさんのコタツ布団はひよが選んだの。」

「そっかー。可愛いな。それにフカフカで暖かいぞ。」

コタツにお鍋、そして一家団欒という何者にも変えがたいシチューエーションに感動した桐嶋は逸る心を抑えつつ、スーツをハンガーに掛け、部屋着に着替えるとコタツの中へと足を潜り込ませた。


「あ〜、俺、この瞬間に今年一番にして最大の幸せを感じてる・・・」

「ひよも今年一番幸せー。」

「・・・今年はもうすぐ終わりだぞ?」

コタツに入ってほっこりしてる親子に向かい、横澤は鍋から取り分けた具を小皿に入れて『熱いから気をつけろ』とお母さん家業よろしくとばかりに差し出していく。

ぐつぐつ煮える鍋を囲み、白い湯気で立ち込める部屋の中では、3人のはふはふと息を吐いては鍋に舌鼓を打つ音が響き合った。


そんなほのぼのとした暖か健全家族を絵に描いたような所へ、不健全な行為が始まろうとしていた・・・・


「んぐっ・・・!?」

突然箸を咥えたまま、横澤が喉を詰まらせる。

「お兄ちゃん、大丈夫?喉詰まったの?」

「う・・・あ、いいや・・・平気。」

心配そうに横澤を窺ってお茶を差し出す優しいひよに礼を言うと、横澤はギロリ、と向かいに座る桐嶋を睨んだ。


理由は簡単。


桐嶋がコタツの中で足先を伸ばし、横澤の股間を突付いてきたからだ。


(・・・・このヤロー・・・俺が鍋奉行してるから鍋の前から離れられないのを分かってて悪戯してきやがったなっ!)

コタツの中という布で隠された闇での淫行。

しかもすぐ隣には穢れを知らない少女がにこやかに微笑んでいる。

八方塞がりの横澤は逃げ場を失い、桐嶋の『つま先の餌食』になるしかない。


「・・・んっ!」

クニュッ、と桐嶋のつま先がいやらしい動きを再開させると横澤も箸を持つ手を震えさせた。

決してそう広くはないコタツだから、桐嶋の足先は簡単に向かいの横澤に届き、伸ばされた足の指がバラバラに動いては股の間の『あらぬところ』を刺激する。

まさかこの歳になって、つま先で陰部を弄られるなど思ってもみなかった横澤は、指や口とは違う感触にただただ翻弄するだけ・・・



「横澤、箸が進んでねぇな?どうした?もうお腹一杯?」

「うるせぇ・・・熱いから・・・ちょっと冷まして・・・ぁ・・・っつ」

・・・多分、今・・・足の親指で先端辺りを突付かれ変な声が出てしまったが、ひよには豆腐が熱くて声を出したように聞こえただろう。

とりあえずセーフだ。と安堵する横澤の顔を真正面から眺める桐嶋は楽しくて仕方ないのか笑いを噛み殺している。

ひよさえ居なければすぐにでも鉄拳をお見舞いしてやるのだが、折角の団欒を壊す訳にはいかず横澤は怒りを堪えた。

その横澤の心情も計算に入れてるのか、抵抗しないと分かった途端、桐嶋の足ぐせはますます悪くなり・・・・


人間の足の指ってこんなにグニャグニャ動くものなのか?

ひょっとしたら桐嶋の足先からは謎の触手が生えているんじゃないか?

などと桐嶋自体が人間かどうかも疑わしいほどの巧みで絶妙な足技がコタツの中で展開し、横澤は豆腐を箸で摘んだままフルフルと小刻みに震えていた。

「ふっ・・・ふ、ぁ・・・ぅ、んっ・・・ふぅー・・」

ついに横澤の口からは、喘ぎ声とも溜息ともつかない艶かしい吐息のような空気が漏れる。

「お兄ちゃんの『フーフー』は変わってるね。それにもうそんなにフーフーしてお豆腐を冷まさなくても食べれるんじゃない?」

『お兄ちゃんは猫舌なんだね。』、と大人の事情を知らない純真なひよが横澤に語りかけてくるも、横澤は頷くのみ。

何しろコタツの中ではひよの父親による愛撫が次第に大胆になるばかりで・・・

足の指を揃えては横澤の茎部分を擦り、そうかと思えば指を開き先端を摘んだり。

もぞもぞ、グニグニ、すりすり、と足指で出来る可能な事の限りを尽くしては、最後に足の甲を陰部の下に潜り込ませて二つの双球を『ぐいっ』と持ち上げるものだから・・・


「・・・うひゃっ!?」

なんて、素っ頓狂な声が。

(だって、仕方が無いじゃないか!もう俺のアソコはしっかりすっかり勃起してるんだからっ!!)

誰に弁解するとも無しに横澤が心の中で『下半身』と葛藤する。

もはや、ここまでくれば桐嶋にいいように弄ばれて、こんな家族団らんのコタツの中で射精するのだろうか?、と横澤は自分の悲しい運命に涙しかけた。

その時だった。



「ごちそうさまでした。」

女神の如くご馳走様と挨拶し、ひよが箸を置いて食事を終えたのだ。


「あ・・・あれ?ひよ・・・もうお仕舞いか?この後には雑炊だって・・・」

今ひなに席を立たれては我が身の危険とばかりに桐嶋がひよを引き止める。

「ひよ、お腹一杯でもう無理。宿題が一杯出てるから部屋に行って勉強してるね!」

天使のような満面の笑みを見せ、団欒の場からひよが立ち去ると、残されたのは桐嶋と横澤。



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