* hatsukoi *
□HELP me!
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ピンポーン、と家のチャイムが鳴った。
しかも一度きりではなく、高速連打で何度も何度も。
・・・うるさい。今何時だと思ってるんだ。もう夜だぞ。
大体予想はついているが・・・しつこいチャイム連打主に会うため、扉を開けた・・・
「うわああああああ゛あ゛あ゛トリィィイぃィぃぃぃい!!」
・・・が、即座にバタンと扉を閉めた。
・・・やはりアイツか。来るだろうとは思っていたが・・・・・・今回のは特に酷いな。
「トリー、トリィィー!開けろ、いや開けて下さいぃー!」と、奴の悲痛な声があまりにも・・・完璧御近所迷惑なので、開けてやることにした。
「トリぃ・・・助けてぇぇ――!!!」
「・・・・・・うるさい、吉野」
犯人は吉野千秋、14歳(半泣き)。
その腕が抱きかかえているモノは、ノートと教科書、そして問題集。
夜だし、外は寒いし、千秋は半泣きだし…とりあえず家に上げてやった。
が。
「・・・吉野、お前・・・テスト実施日が明日からだってこと、分かってるよな?」
「・・・・・・ぁぃ」
「じゃあコレは何だ」
「うぅぅっっ」
その瞬間、千秋の瞳がうりゅっと潤んだ。・・・その破壊力は、絶大だ。
「・・・だから、助けてって言ってんじゃん〜〜〜ッ」
やめろ、そんな捨てられた仔犬のような濡れた瞳で俺を見るな。
「・・・・・・トリしかいないんだよー・・・」
上目遣いをするな。
「・・・分かった、分かったから。だから泣くな・・・」
・・・何でもお前の言うこと、聞いてやりたくなるだろう?
俺は跳ねる鼓動を悟られないようにしながら、小さく溜め息をついた。