* hatsukoi *

□視線と君の体温と
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急激に寒くなり、朝起床するのが億劫になってきた今日この頃。


律は眠りが浅かったためか、いつもより少し早く目が覚めた。

最近はまだ締め切りも近くないし周期でもないし、結構早めに帰って寝れるはずなのだが、・・・帰宅途中に高野に捕まってしまい、家に連行されて、そのまま散々恥ずかしい事を言われ、言わされ――


「・・・ッ」


・・・思い出すだけで顔が熱くなる。

でも、昨日の事を思い出して恥ずかしがっていると、何だか高野に負けたような気がして。

律はよからぬ妄想を払拭しようとベッドから降り、小走りで洗面所へと向かった。本当は、もう少し眠れる時間だったけれど。






冷たい水で顔を洗うと、完璧に目が覚めてしまった。

昨日少しだけやり残した仕事を思い出し、出勤準備をして扉を開ける。


ガチャ


「「・・・・・・」」


・・・そこには、何故か丁度同じタイミングで出てきた高野の姿があった。しかも、思い切り視線がぶつかる。服装からして、高野も出勤するのだろう。


「・・・オハヨウゴザイマス」


嫌だ、このまま出て行ったら間違いなく高野さんと丸川まで一緒じゃないか。

・・・昨日の今日で何か気まずいし、もしエメ編の誰かに見られたら何を言われるか分からない。


律は小さく挨拶をしながら、するすると家の中に入ろうとした。・・・が。


「待てコラ」


高野の長い脚によって、扉を閉めるのを阻まれた。


「・・・何あからさまに視線逸らしてんの?  昨日散々あんな事したクセに」

「はッ、何の事ですか!? てか逸らしてないです!」

「じゃあ何で俺の方見ない?」

「見てますよ!!」


そう言い放ち、律はギュッと高野の方を睨みつけるように下を向いていた顔を上げた。


・・・そこには、真っ直ぐ律を見つめる高野。絡んだ視線に、急に心拍数が早くなったような気がする。




・・・・・・あ。

「(・・・しまった、また口車に乗せられた・・・)」

悔しさと怒りで唇を噛む律に、高野はフ、と勝ち誇ったような笑みを零した。




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