* hatsukoi *

□One Night
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眩しいくらいのネオンが照らす、夜の繁華街。

その片隅の、安っぽい看板を掲げたラブホテルの中に俺はいた。

隣で眠っているのは、ついさっき関係を持ったばかりの見知らぬ男性。

名前すら覚えてないような奴だ。

何さんだったっけ。 葉山サン?それとも佐山サン?

…まあ葉山サン(仮)でいいか。

どうせ今夜だけの付き合いなんだから。

今夜が終わればこの人との関わりは全て無くなり、俺はまたいつもの明るくおしゃべりなエメ編に戻るだけ。

そう思いながら、ベッドの上で頬杖をつい体勢のまま、大きく溜め息をついた。

いつも、そう。

―――ヤッた後は、いつも虚しさしか残らないんだ。




俺、木佐翔太は生まれてこのかた男しか好きになったことがない。

その上メンクイである。

そーゆー『オーラ』?『フェロモン』?みたいなモンが放出してんのか知らないけど、よく声をかけられる。

同性愛者……、一般的にホモ、と呼ばれる部類の方々に。

そして、相手が俺好みのイケメンさんだったならば言われるがままについて行く。

それが俺の基本スタイル。

別に誰かと肌を重ねることは嫌いじゃないし、少しだけ心が満たされる気がするから、むしろ好きな方。

…ただし、一つだけ条件付きでね。


  『お互い面倒なことはナシでスマートにその場限りで』。


つまりは、一夜だけの王子様ってこと。

相手の外見は好きになれるけど、内面は本気で好きになれない俺にとって、都合のいい条件だ。



「……んー…翔太ぁ………」

あ、葉山サン(仮)起きた。

寝起きの虚ろな瞳で、また俺の上に跨る。まじですか、第2ラウンド突入ですか。


「……ぅ…ン…ふ、ぁ………」

降りそそぐキスと愛撫の嵐。 薄く開いた唇に無理矢理舌をねじ込ませ、絡めとるような深いキス。

唇を離すと、ツツ…と唾液が糸を引き、飲み込めなかった分が口の端から零れ落ちた。

「……ハァ…翔太…可愛い、可愛い…」

繰り返し繰り返し「可愛い」と言い、一向にキスを止める気配の無い葉山サン(仮)。

ついでに言うと、身体を弄る手も止める気配が無さそうだ。

そして、耳元で小さく囁いた。





―――『好きだ』と。






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