BLEACH夢(long)

□君を守る一閃7
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BLEACH 長編

《油断するでないぞ、彩萌!》
『ゆ、油断なんてしてないし!あんたがいつもより、虚を出現させてきてるだけでしょうが!』
《文句を言うな!これも、お前が強くなってほしいと思っての事!まだまだ増やすぞ、石田を守りきるのだ!》

 ここ数日、花蓮のやり方がだんだん過激になってきた。一回に出現させる虚の量が半端ない。どれだけ倒しても、次には倍の数が出てくる。雨竜君を守るのもやっとなくらいだ。

『闇を駆ける光よ 大いなる希望となりて闇を裂け! 光明閃(こうみょうせん)!!』

 だけど、この数日の修行で技数が大分増えたのも確かだった。光明閃は、一体の虚を倒すだけでなく、その威力が失速するまで敵を倒し続ける技。この技で、結構な虚を滅却できるのだけど、バカ精霊は待ってましたとばかりに、また虚を増やす。大分、森の方に追いつめられていたので、虚が遠いところにいる隙に場所移動しないと…;

『ごめんね、雨竜君。走るよ!』
「わ、わかった…!」

 私は雨竜君の腕を取って、川の方へ出た。雨竜君を背後にある岩の影に隠して、空を飛んでいる虚に向かって矢を放つ。

『連刺弓!』

 放つと、一本の矢が分散し、一体一体、確実に仕留めていく。初期の頃より、大分威力が上がった。最初の頃は、弱い虚を倒すので精いっぱいだったが、花蓮の出してくる虚はレベルが高い。前までは一発で仕留められなかったのが、今では軽々と仕留められるようになった。

『っとに、多いな、虚が…!って、背後に回るな、化け物っ!』

 目の前の虚の大群に気を取られていたからか、背後の虚に気付かなかった。危ない…、もう少し気付くのが遅かったら、雨竜君がやられていた。

『ごめん、気付けなかった。大丈夫だった?』
「大丈夫…、君は?」
『大丈夫。もうしばらく隠れてて。一気にカタを付けるから!』

 私は残りの大群に対峙して、弓を構えた。一気に霊子を集める。

『裂連弾(れつれんだん)!!』

 鋭い無数の光が、虚の体を引き裂いていく。連刺弓を極めた結果、新しい技が出来上がったのですよ。その技が、裂連弾。まだ呼び出すか…、と身構えていたけど、もう出す気はないようだ。花蓮は、私を見下ろして微笑んでいた。

《強くなった。初期の頃とは比べ物にならぬな。》
『あたりまえでしょうが…っ。』

 力が抜け、私は岩にもたれかかった。一度力が抜けると、足にも腕にも力が入らなくなる。花蓮との修行は、それだけ厳しいものということなのですが…。しばらくゆっくりしていると、雨竜君が話しかけてきた。

「大丈夫かい、鈴原さん…。」
『うん、大丈夫、大丈夫。怪我してない?』
「…僕より、自分の心配をしたらどうなんだい?」
『いいの。休んだら元通りなんだから。ほら、もう戻った方がいいよ。付き合わせてごめんね。』
「…気にしないでくれ。こっちこそ、いつも守ってもらってばかりで悪いと思ってる…。じゃあ。」

 雨竜君は、吸い込まれるようにすっと消えて行った。消えて行ったのを見送って、ほっとしていると。

『…!!』
《・・・よし、今日はこれくらいにしようか、と言いたいところだが。》
『行かなきゃ!』
《行けるか?》
『大丈夫。近いし、アパートの近くから感じる。早く行こう!』

 私はさっきまでの疲れも忘れて、山を駆け下りていた。この修行を続けてからというものの、技が強くなったり増えたりするにつれて、虚や死神の気配なども何となくわかるようになってきた。前までは、全く微塵も感じることができなかったんだけども…。

(そのせいで、織姫ちゃんや茶渡君を助けてあげられなかったけど、今なら…!)

 アパートの周辺まで来て、角を曲がると、虚が幽霊の男の子を襲っていた。このままじゃ、あの男の子が虚にやられてしまう!
 私は、弓を虚に構えた。

『迅(シン)!!』
「疾(シッ)!!」

 矢は虚に命中し、虚を滅却した。…ん?滅却したはいいけど、何かもう一つ声が聞こえたような…。と思い、前を見ると、白い滅却師の服を着た雨竜君がいた。

『え、雨竜君!?』
「鈴原さん!?どうして、ここに…。」
『いや、虚の気配がしたから…。修行から帰る途中で。』
「そ、そうだったのか。…また、無理したのかい?」

 私の服の様子を見て、心配そうに言った。まぁ、最近の花蓮のやり口がひどいですからね…、服もぼろぼろになりますわ;

『大丈夫だよ。それより…。』

 私は、襲われていた幽霊の男の子に向き直った。まだ少し、怯えている。

『大丈夫だった?君。』
「だ、だいじょうぶ…。おねえちゃんは?」
『私は大丈夫。…私、死神じゃないから、君を成仏させてあげることはできないけど…、また、虚が来たらいつでも駆けつけるから。』
「ありがとう、おねえちゃん!」
『じゃあ、またね。…行こう、雨竜君。』
「…そうだね。」

 早く、成仏できるといいな。
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