BLEACH夢(long)
□君を守る一閃1
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BLEACH 長編
(…?みんな、なんで…?)
私は、天井を見て、呆然としながらそんなことを考えていた。天井、と言っても、自室の天井でも、保健室の天井でもなかった。見慣れない、天井。そして。
(みんな、私を見て、泣いとる…?)
そう、私を取り囲む父、妹、その他親戚は、私を見て泣いていたのだ。全く、訳が分からない。数分考えると、すっと記憶が戻ってきた。
(あ、そうか…。)
私、死んだんだ。事故で…。一瞬の出来事だった。歩行者用の信号は、確かに青だった。だが、横から飛び出してきた車にはねられたのだ。確実に、相手の信号無視で起こった事故。そして、あの一瞬でもわかった。相手は確実に、飲酒していた。
(ドライバーの顔、真っ赤だったもんなぁ…。どんだけ飲んでたんだ、あの人…。)
死んだら、どうなるんだろう。母が死んでから、よく、そんなことを考えていた。でも、こんなに…、何と言ったらいいんだろう。空っぽだ。特に、悲しみも苦しみも、私をはねた相手に対する怒りも、不思議なほどなかった。母も、こんな感じだったのだろうか。…まぁ、私を除いた家族全員は、いろんな感情に翻弄されてるんだろうけど…?
(さて、私はこれからどうなるのかなぁ?)
《どうなる?さて…、それは鈴原彩萌、お前次第だ。》
(!?)
声がした。けど…、どこにいるのか全く見当がつかない。…え、マジでどこから声が?さっきまで、何の感情もなかったはずが、急に恐怖を感じ始めた。
《見えぬか?わしはここじゃ。》
『え;…だから、どこ?』
《ここじゃと言うとるのに。》
ここじゃ、と言われたって、声のする方を見てもいないんだから、どこにいるのかわからない。
《ここじゃと言っておるだろう!》
『ぎゃああああぁ!!?』
み、耳元で、えらくでかい声が…!右耳!右耳ちぎれるわ!右を見ると、年齢不詳の女性が立っていた。
《全く。なぜわしの声が聞こえるくせに、姿だけをみつけることができんのだ。》
『い、いや、聞こえてはいたんですが…、ってか、何なんですか、人の病室で大声あげて!』
《お前が気付かぬのが悪い!お前のために出てきてやったのに…。》
『私のため?』
訳の分からないことしか言えないのか、この女の人は。というか、どこの馬の骨かも知れない人に、そんな恩着せがましいことを言われる筋合いはない。
《あぁ、そうか。まだ名を名乗っておらんかったか。私は花蓮(かれん)。この世界と、とある世界をつなぐものだ。》
『とある世界…?どこの事?』
《死神の世界。…と言ったら、わかるかな?》
『死神…。DEATH NOTEのことですか?』
《貴様、それは生前に漫画読んだり、アニメ見たりしていたのか?》
『いや、していませんでした。』
《貴様、適当に答えおったな。》
ものすっごい睨まれてる。花蓮とかいう人に、ものすごい睨まれてるよ、私。
《致し方ない。では、ヒントじゃ。》
『ヒント…?…!?』
花蓮の姿がまぶしいくらいに光ったかと思うと、花蓮の服装が変わっていた。…って、え!?
『…BLEACH。』
《そうだ。死神の世界。》
『なる、ほど…。で?』
《で?ではあるまい。…行きたくないのか?その世界に。》
『…え、行く?』
《あぁ、お前はもう、この現世から身を引いた。それも、最悪の結果で人生の幕を引いたのだ。そうは思わぬか?》
『…死んでから、全く感情がなくなっちゃったから何とも言えやんけど…。まぁ、状況から見ればそうやね。』
《生前、お前が最も愛した異世界。私はその世界とつながっている。お前が望めば、連れて行ってやることも、その世界で住まわしてやることもできる。行きたいとは思わぬか?》
『・・・・・・。』
BLEACHの世界、か…。生前、アニメは穴が開くほど見たし、できることならBLEACHの世界に行ってみたいとさえ思った。私が、もっとも引き込まれていった世界…。今、その世界に行ける手立てがある。
《もう、心は決まっておろう。》
『…まぁ、ね。行きたいな。その世界。』
《行きたい、と言うのはいいが、その世界かて危険なところ。その世界でも、お前は命を落とすやもしれぬ。その覚悟はあろうな?》
『…一回死んでるんやし。怖ないよ。』
《ふっ。ならよい。では、目を閉じろ。一瞬にして連れて行ってやろう。》
私は花蓮の言うとおり、目を閉じた。突如、ふわっと体が浮いたような感覚になり、意識が飛んだ。
目を開いたら、私は、天井ではなく、青い空を見ていた。