T
□放課後、あの場所で
2ページ/4ページ
校門をでたらいつもは左に曲がる。
でも今日は、
「こっちこっち」
と、恋人に右へと誘導された。
「なんでー?」
「なんででしょー」
「教えてくれないの?」
「教えてあげないのー」
なんて馬鹿なやり取りをしながら、
取り敢えず翔ちゃんの進む方向に合わせる。
ていうか「なんとなく」じゃないのかよ!
翔ちゃんのことだから、きっとすごく良いものをみせてくれるんだろう。
でも、
翔ちゃんのことだから、とんでもなくつまらないものの可能性だってある。
…櫻井翔って人は、実に紙一重なのである。
「ねーねー帰り道わかるの?」
「それくらい分かるよ!」
紙一重なその人は、あははと笑って、住宅街にその声を響かせた。
「だって、さっきから滅茶苦茶に歩いてるじゃん」
「これが滅茶苦茶じゃないんだなあ」
……? と首を傾げる俺。
校門を出てから、閑静な住宅街を右に左とうねうねさ迷っていたのに、
それに意味があるの?
翔ちゃんは、鼻歌まで披露しながらご機嫌に、また家の角を曲がった。
…ちょっと期待してみてもいいのかもしれない。