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□放課後、あの場所で
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「しょーちゃん!」


ガララとなんだかもの凄い勢いで三年二組の教室のドアを開ける。
と同時に俺は叫ぶ。


「櫻井翔いますかー?」


俺のその問いかけに、ドア付近にいた女子が答えてくれる。


「翔ならそこにいるよ、呼ぼうか?」

ここに来るたびいつも思うけど、
なんで三年生ってだけでこんなに大人っぽいんだろう。
一六歳と十八歳、たった二歳しか違わないはずなのに、
雰囲気がまるで違う。

なんでかなー、と悩んでいるうちに、
翔ちゃんが足早にこちらへ向かってきた。


「おっそーい!」

「ごめんごめん! 行こっか」


翔ちゃんは軽く笑って、
俺の手を取り、教室を出て歩き出す。


本当は大して待っていないのだけど、
それをわかっていても謝ってくれる翔ちゃんも大人。


「今日は遠回りして帰らない?」

生徒玄関に向かって廊下を歩いている途中、翔ちゃんからそんな提案があった。


「…? いいけど…どうして?」

「ん? なんとなーく」


翔ちゃんはニヤリと笑うと、
俺と繋いでいる左手をぶんぶんと子供みたいに振った。

翔ちゃんは右利きで、俺は左利きだから、手を繋ぐときは都合が良い。


まあ流石に、高校生にもなって手を繋ぎ合うのもどうかと思うけど、
俺たちは家が隣同士で、小中高と学校も同じ。

それならこんなに仲が良いのも納得じゃない?





実のところは、


俺と翔ちゃんは付き合っているんだけどね。
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