牡丹の間
□華の姫 挿話 “簪”後編
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「花。ここ間違ってる」
「え」
月に指摘され見てみると、確かにかなり初歩的な間違いをしていた。
「あぁ、ごめん。直しとくよ」
けれど書類を受け取ろうとしても月が書類を渡そうとしない。
「月?」
複雑そうな顔をしている兄に促すと、ポツリと呟いた。
「あの子、私は好きじゃない」
撩華のことだろうか。
「花はいつか、あの子のせいで大切な物を無くすよ。だから、」
それ以上聞きたくなくて、彼の言葉を手で制した。
「月、大丈夫だよ。
…撩華とは、もう二度と会わないから」
月は驚いたような、困ったような顔をした。