桔梗の間
□ベタベタし過ぎ。
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世間の兄弟はこんなベタベタしたりしねぇよ、と教えてやるべきなんだろうか。
午から楸瑛と共に探索をする約束をしていたが、諸事情で遅れてしまった。
「迅、遅いぞ」
「悪か…」
った、まで言えずに楸瑛の姿に迅は硬直してしまった。
正確にはその体勢?にだが。
「やぁ迅。今日も、楸瑛と遊びに行くのだね」
楸瑛は雪那の膝の上に座っていた。
“も”にいらない強調がされている気がするんですが。
ていうかそもそもその体勢変でしょ。
言いたいことはあるが、自然界では強いものに従え。
その大原則に逆らわないことにした。
「えぇーと、今日は湖海城の西側です」
意図的に雪那の問いにずれた答えを返しつつ、迅は楸瑛を見た。
もう幼児とは言えない年なのに兄の膝にのせられていることを恥ずかしいとは思わず、むしろ大好きな兄の近くにいられる事を喜んでいるように見える。
大丈夫か、この兄弟……
年のわりにアホの子楸瑛も心配だが、楸瑛を溺愛しまくる兄どもも相当だろう。
たぶん日頃から兄弟はこんなもんだよ、なんて間違ったことを教えているに違いない。