▼Invisible die in the world we. (忍+岳)


人生なにがあるかわかんねぇってよく聞くけど、その言葉はマジだ。
なめて掛かると痛い目に合うぜ
俺は今、身をもって体感している訳だ。


「岳人、俺本気でお前のこと…」
「頼む侑士、その先は言うな」
「好きやねん」
「…オイ。今言うなって言ったよな?」
「あかん、めっちゃ好きや!つれない岳人も好きなんや…!」
「はぁ……人の話聞けよな…」

中学三年にもなれば恋の話題や妄想も豊富で、そういったことに興味津々な俺たちは健全な男子学生。
青春真っ盛りな上に残り少ない中学校生活を満喫中。
「放課後、裏庭に来てください」なんてベタ過ぎる置き手紙が靴箱にあれば、たとえ冗談でもそりゃテンションが上がる。
今までテニス三昧だったし、遂に俺にもこういう時が来たか!と拳を握りしめる勢いだ。
羽がなくても空も飛べる勢いだった。
…のに、今は見事に打ち落とされた。

「なんや?岳人も俺が好きやってことかいな!?」
「違えよ馬鹿!勝手に心の中を読むな」
「やって落とされた言うたやん〜」
「だから口に出して…あー無理、もうお前とまともに話せる気力さえないっつの」

目の前で百面相を披露中のパートナーにツッコミをお見舞い。
ツッコミはすげえ疲れるから苦手だ。
関西人はすげえな。

こいつが俺を裏庭に呼び出した張本人、侑士。
結論をいうと、侑士は俺のことが好きらしい。
ライクじゃなくてラブの方な。
男同士だとかそんなことはお構い無しで好きだと言われた。
むしろ「岳人はそこらへんの女よか可愛いで」なんて言うくらい、侑士は俺に関して重症だ。
今までは自覚があっても打ち明けられず、一人悶々と考え込んでいたらしい。
…が、最近吹っ切れたらしく、それから毎日好きやねんアピールをしてくるようになった。
…俺としては一生打ち明けないで欲しかったんだけどな。
俺はノーマルで、大体男を好きになる感覚なんてわかんねえ。
そういう人達がいても俺には関係ないと思ってた。
って、これじゃ差別発言になるからやめ。
言葉を変えよう。
要するに俺は、侑士の気持ちには答えられない訳で。

「…岳人が嫌やって言うたら引く」
「はぁ…!?」
「言わんの?からかうつもりならはっきり断り」
「…っ……。」

本気の侑士は少し苦手だ。
感情をぶつける癖にまだ何処かで駆け引きをしようとしている。
俺はこいつとずっとやって来たから、そんな返事を吐いたところで侑士がこのまま引き下がるわけないって知ってる。

「あのな…断っても聞かねえ癖に何言ってんだよ、馬鹿にしてんのか?」
「ようわかっとるわ。さすが俺の岳人やなぁ」
「感心すんなよ!つーかお前のじゃないんだけど?」
「ええやんか。俺のモンになってや」
「だから嫌だって言ってんだろ!用がないならもう帰るぜ」

埒が明かない会話を無理矢理中断する。
付き合いきれねぇと吐き捨てれば慌てた侑士が何事か言いつつ追いかけてくる。
今日もまた、帰りの時間にまで先程のような口説き文句を言われるのかと思うと気が滅入った。

かと言って、日に日にそういう感情がなくなりつつあるのも事実。
身長の関係で俺の隣まで追い付いた侑士が「一緒に帰ってもええ?」と聞いてくる。女子みたいな聞き方すんな気持ち悪いんだよ!と言えば、嬉しそうに笑った。

なぁ侑士、お前って実は物凄いマゾ?




(つーか…冗談やめろよ、俺)



今は、隣に置いてやってもいいかなと思う。
隣にある馴れた温もりを手放すのは、なんとなくだけど惜しいんだ。









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