04/22の日記
22:40
忍岳:夢現
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此処は何処やろか。
霧がかった真っ白なだけのふわふわした空間に俺だけ居る。
どうせつまらん夢やと、夢やのに何処か冷製で居る自分に思わず笑みが零れてまう。
そんな俺の予想を遥かに裏切り、霧の中から見慣れた姿が浮かび上がった。
「岳人?」
なにしとるんや。
口に出そうとしても続きが声として出んかった。
夢やのに思い通りにいかん。その感覚に嫌な予感を覚える。
こちらを見とる岳人は悲しそうな表情でもないし楽しそうな表情でもない。無表情で俺を見つめたまま。まるで感情がのうなった人形みたいな感じや。
「侑士、 」
岳人の唇から紡がれた言葉が音になって届く前に、俺は現実世界へと引き戻された。
正しく言えば自分から醒めようとしたんやと思う。
「…っ…!」
ガバッと、効果音を付けるならこれや。
普段なら飛び起きる真似はせん俺が、珍しく夢で飛び起きてしもた。
あっさりした夢や思うとったらとんだ誤算やで、あんなん悪夢以外の何物でもないやん。
カーテンから差し込む月明かりが眩しい。思わず側に置いたままの眼鏡に手をやるが、掛けとっても意味があらへん事に気づいた。
「なに動転しとるん…アホか俺は」
とりあえずと辺りを見渡し、眠ってからそないに時間が経ってへんことはようわかった。
わかったのはええ。
ただ、なにか足りない。
「…岳人?」
溜め息を吐けばこの部屋にいた存在の名を確かめるよう呟く。
応答もなければ姿も見えん。
土曜日ということで泊まりに来とった岳人。
数刻前まで確かに俺と居った。
久しぶりの休みに羽目を外して、互いに満足するまで求め続けとったんや。
して、俺の腕の中で寝息を立てとったはずや。その寝顔を見て俺も眠った。
そうしたらこのザマや…なんやねん嫌がらせかいな。
それよりも岳人が居らん。
冷静にならなあかんと思うとっても無理や。
やって、岳人が居らんのやから。
とりあえずとベッドの下に投げ捨てられたままの衣類を適当にまとう。いくら自分の部屋といえど裸で歩くのは気が引けるからや。
漁りながらシャツを探すが見当たらない。
岳人の服は全て落ちたままで、俺のシャツだけなかった。
これで岳人が遠くへ行ってへんことはわかった。
せやけど俺は、まだ変な胸騒ぎに苛まれとる。
会いたいねん、今すぐ。
突き動かされるようにそのままベッドから立ち上がった瞬間やった。
「侑士?」
物静かな部屋でガチャっと響くドアの音。
ひょっこりと顔を出し、なにしてんだよと呑気に声を掛ける影。
「侑士も起きて……って、おい!」
瞬間的に、抱きしめなあかんと思った。
岳人の体が一瞬強張る。
微妙に警戒しよったな、俺の気も知らんと。
「侑士?」
「アホ、何処行っとんや」
「喉乾いたから水…つーか、なに。どうした?」
トントンと馴れたように背中を擦ってくる。
知っとるか?さっきまでそこに爪立てとったんは岳人なんやで。
地味な痛さが伝わる。不思議と嫌やない。
肩に顔を埋めてみる。
岳人の匂いがダイレクトに届いて落ち着く。さっきまでのがっついてた時とは違う、安らぎというもんを直に感じた。
俺が安息に浸っとる言うのに、当の本人は「またか、ラブコメ馬鹿!」だの「やっぱ眼鏡馬鹿」だのと悪口を叩いとる。
酷い言われようや。泣きたなってきたで。繊細やからな、こう見えても。
少しずつ体重を掛ければチョップが降ってきた。段々乱暴化する岳人の行動…別に痛ないんやけど。まあ、ええか。
「ユーシー、重いんだけど」
「がっくん」
「なに?」
「なんや落ち着いたわ」
「あーハイハイ、そりゃ良かったぜ」
そうしてまた、背中を叩く。
今度は少し乱暴に。
堪らなくなった俺はそのまま岳人の首筋に唇を寄せる。
さっきまであんなことをしといて、今更「ぎゃあ」と驚いてみせる岳人の姿に自然と笑みが零れた。
こないに幸せな現実があるにも関わらず、夢に惑わされた自分がえらくダサい。
ダサい言うか情けないで。
やけど、そのたびに岳人が救ってくれると思うと………やっぱし、嬉しいやんなぁ。
「岳人、好きや」
知ってるだとかそんな憎まれ口が帰ってくる前に、悪夢ごと塞いでしまおうか。
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関西弁が上手く使えませんでした。
関西の方からしたら違和感ありますよね、絶対。
本当にごめんなさい。(土下座)
夢現な忍足が書きたかったのです。
満足!
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