06/12の日記

23:58
菊岳:感情の名前は
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アクロバティックプレイなんてもんはテニスには本来必要ないと言われる。
やってる俺でもたまに思う。
けどよ、それが俺らしさなんだから仕方ねーじゃん。
だからアクロバティックプレイは譲れない。
なにより好きだからだ。
そんな俺にもライバルがいる、青学の菊丸英二。
俺と似たボレーヤーで口を開けばほいほいほいほいうるせえ奴。
アクロバットなプレーで人を魅了するところは俺と同じだ。だからこそ気にくわない。向こうはそんな風に思ってないかも知れないけど。

クソクソ、被ってんだよ!




「むっかひー!!」
「おわぁああ!?」

ドスンと勢いつけて後ろから羽交い締めにされたら思わず叫ぶだろ、普通。
驚きと恐怖で背筋がぞわっと来た、しかも犯人はわかってんだ。
その証拠に背後から「てへへー」と聞こえる。
間違いなくあいつだ。つーか後ろからは卑怯だろ。

「ったく…なんなんだよお前、いきなりびっくりすんだろ!」
「驚いた?」
「十分ビビったっつーの!」
「向日おっかしー!…あ、大石発見!!おおいしー!」

俺が文句を言ってもからかうザマだ。
本当に腹が立つ。まだ話は終わってないのに、大石の姿を見つけるなりそっちへ向かう。
菊丸はそのまま大石の背中に飛び付き、おんぶ状態。「英二やめないか」なんて言ってみても、慣れているのか素直に受け止める大石。あいつはすげえな。

「ったく、髪がぐしゃぐしゃになんだよ!」

思わずイラッとして吐き捨てるように口にした言葉、だけど本当はそんなことにイライラしてる訳じゃない。
















今日も1日よくやった。

自分で自分を褒めないと、たまにやっていけなくなる時がある。
まさに今そんな感じ。
最近身につけた低めムーンサルト。
これでボールへの反応も格段に早くなったぜ。
だけどまだ、決定的に足りない部分がある。

「…もう、やる気出ねえ」

自室に戻ってボレーヤーの天才二人と話すのも、今日は気分じゃない。自分に自信がなくなった訳じゃないけど、俺だって人並みに落ち込んだりする時はある。
けどそれを一々口にしていたら、それこそ怖じ気づいて好きな事まで嫌いになりそうで怖い。
だから今は、気のむくままにダラダラしてよう。

夜のコート、風が吹いてて心地いい。
別のコートからは未だにボールを打つ音が止まない。誰か練習してんのか?熱心な奴もいるもんだな。
コートの側にあるベンチに腰を下ろす。顔を空に向けたら思いの外星があって綺麗だった。



「あっれ〜?向日じゃん、なにしてんの?」

「げ…」

そうこうしてまとめたにもかかわらず、今目の前にいるのは自分が一番会いたくない相手。アクロバティックと言えば俺かこいつの名前が出るくらいの相手、

…菊丸英二。
俺のライバルで、人の話を聞かない奴。

「今げって言った?なんでそんなに俺のこと嫌いなんだよー、もう」
「別に…お前がいる時は俺の気分が悪いんだよ」
「なにそれ」

あ、笑った。
こいつの人懐こい表情は割りと苦手だ。
誰彼構わず振り撒くとこも実は気にくわない。

「お前は何しに来たんだよ?」
「俺?俺はー、みんな寝ちゃったから暇で出てきただけ!」
「へー」

そういえばこいつの部屋に宍戸と鳳がいたんだっけ。
仲良し部屋、なんて周りに言われていたのを思い出す。確かにこいつらの部屋は仲良し部屋だ。別にどうでもいいけどよ。



「あ!そういえばさ、向日の低めムーンサルト!俺見てみたいんだよね」
「え?」

いつの間にか隣に座る菊丸は、何を思ったのか突然切り出した。きらきらと瞳を輝かせて。

「だって俺出来ないし。あれ凄いじゃん?」

「え…」

凄い?俺が?
周りからは菊丸より…なんて言われたりしてた俺が?

ポカンとしていると、こっちを向いた菊丸が「ホントだよ」と笑う。
俺の中で芽生えていた劣等感に、ピシャリとヒビが入る。
でも素直にはいそうですかと言えない俺は、その視線を逸らした。
こっち見んな、クソクソ。

「…べ、別に無理して褒めんなよ」
「なんで?」
「お前はその、ライバルっつーか…そんなんだし」
「なにそれ、俺向日のライバルなんて嫌だにゃー」
「はぁ!?」

やっぱコイツ、腹立つぜ!
思わず拳を握る。やっぱさっきのもただのお世辞じゃねえか!なんて言おうとしたら、ぎゅっと手を握られた。なんだ、これ…。


「俺は、向日ともっと仲良くなりたいの!」

「………え?」

暗くてもわかった。
仄かに顔が赤い菊丸が、目の前にいる。
こんな表情は見たことない。
つーか、こんなのいつものほいほい言ってるあいつじゃない。
妙だ、調子が狂う。

「おまっ…なに言ってんだよ、馬鹿か」
「だからー…もういいよ、向日の鈍感!馬鹿!」

そう言って、ぱっと離された手。
いきなり不機嫌になって訳がわからない。
菊丸はそのまま、逃げるようにこの場から居なくなった。





「つーかマジ、…意味がわかんねえよ」







ライバルだと思ってたのに、倒したい相手だったのに、心臓が妙なことになってる。
握られた手の感触と、一杯一杯って感じの赤く染まった表情も、はっきりと焼き付いた。





「俺、もしかして…」




ここに来て初めて気付いた感情、その名前は―






















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菊岳!!!!!

反映が遅くなってごめんなさい!!
あまりにも長くなり過ぎたので、前編後編に分けました。
後編は今月中に更新します。
手直ししてから^^

初めて書いた菊岳、菊丸は攻めでも受けっぽい感じになります。。。
アンケートコメからでした!
リクエストありがとうございます^^

この二人、同じプレイスタイルでも
菊は身長高い方なんだよね。
並ばせたら可愛い!
菊、初めの方はなんだかふざけるキャラじゃなかったけど、今じゃ完全に猫化してますね…!
ちなみに青学は不二が好きです^^



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