「おい侑士ー」
「なんや?岳人」
お互いの名前を無駄に呼び合う先輩達。
別にいつもの事だ。
向日さんが忍足さんにやたらと絡みに行く事なんて。
忍足さんも忍足さんでどんな向日さんも受け入れるから、向日さんはいつも真っ先に忍足さんを頼りに行く。
それはダブルスのパートナーだからというよりも、恋人同士の雰囲気に似ていた。
そんな二人を見た鳳が心配そうにこちらを見てくる。
眉根は下がり切って情けない表情で、今にも泣きそうな表情とも取れた。
…何なんだお前は。
全く、お人よしを通り越して鬱陶しい。
「ひ、日吉…」
「うるさい。喋るな。気が散るんだよ」
「でも、いいの?」
「…何が?」
そう、俺は別に気にしていない。
向日さんが忍足さんといちゃついていようが。
向日さんが忍足さんの事ばかりだとか、忍足さんが向日さんに常に甘い事だとか。
つまり二人が常時べったりなこととか。
「でも俺だったら……うう、宍戸さん」
「うるさい。第一俺はお前じゃない」
フォームの見直しをしている俺に突っかかってきたのは鳳だ。
人のことばかり心配をして、まったくあの人に似てきた。たまにそれがお節介に感じるんだが、本人は気付いてない。
「何回も言っただろ、俺は気にしてない」
今日はまだ宍戸さんが来ていない。
なるほどな、だからこいつは俺の近くにいるのか。
同じ学年で同じレギュラーだからって、そう親近感を持たれても困るんだが。
「でも日吉…指先震えてるよ」
「……。」
…ああ、本当に鬱陶しい。
「駄目だよ鳳、日吉を刺激しちゃ」
「あ、滝さん。お疲れ様です!」
「お疲れー」
暫く静寂に包まれていた空間に、ニコニコと楽しそうな表情を浮かべた滝さんがやって来た。
この人はある意味、俺にとって苦手な人だ。
「日吉もたまには素直にならなきゃ、そろそろ忍足に取られちゃうよ?」
「さあ、どうでしょうね」
「…なにそれ、本当可愛くない」
別に可愛くなくてもいいでしょう。
言ってる意味がわからない。
ボソッと放たれた嘆きも、俺にははっきりと聞こえた。
「変に心配しなくても…別にいつものことですから」
そう告げて、俺はまたフォームの見直しに集中することにした。
(でも滝さん、日吉の指が震えてるんです…)
(鳳、お前はもう黙ってくれ)
(うーん、日吉はひねくれてるね)
(だから何なんですか)
(………。)
(………。)
(…うん、やっぱり全然可愛くないね)
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顔には出さないけどやきもきしてる日吉(笑)
書きたかったので書けて良かった!
でも最後は爆発しちゃうんですよ、きっと。
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