06/10の日記

23:56
跡→←岳:無自覚で鈍感で素直じゃないこいつら(早くくっつけbyレギュラー一同)
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氷帝学園テニス部
放課後の部活タイムが始まった。
部長である跡部の指示の元、本日も様々なトレーニングが行われている。

しかしそんな中、上の空なレギュラーが一名。

「岳人、ええ加減戻ったらどうや」
「……。」

コートを恨めしげに睨む赤毛の少年。
向日岳人はすこぶる不機嫌だった。
ラケットを持っているものの、ただ持っているだけ。
足を組んで座り、眉間には皺が寄り、ベンチからコートの様子をマジマジと見つめている。
視線の先には跡部が日吉とシングルスをしていた。
お互い一歩も譲らず、楽しそうに。
外野が時期部長と現部長の対決だなんだと騒いでいても当の本人達は微塵も気にしていない様子だ。

(そうや、確か今日はダブルス強化って言っとったな)

なのにいつまで経っても日吉とのラリーが終わらない。
パートナーの怒りの理由に気付いた忍足は、ため息を一つついた。

「跡部の奴、終わらんなぁ…それやったら俺も一人で練習するで」
「侑士っ!!」

ぼそりと呟いてその場から立ち去ろうとしたら、岳人に腕を捕まれた。

「今日は、その、…ダブルス強化だろ!」
「岳…」
「跡部なんか知らねえ、一緒にやろうぜ」

掴まれた腕にグッと力が入る。
岳人が今どんな気持ちか嫌という程伝わって、忍足は二度目のため息をついた。
本来なら介入すらしたくない問題だ。
だけど目の前のパートナーを放っておけない。

「しゃあないなぁ…やるか」
「おう!」

たくましい奴やと思いながらポンポンと軽く岳人の頭に触れると、いつもの笑顔が見えた。
前から思っていたが、岳人は跡部が好きなんだろう。
跡部を見つめる視線は敬愛でも尊敬でもない、ただの恋い焦がれる眼差しだ。

(…っとに、世話が焼ける奴っちゃ)

忍足はそのまま岳人を連れて別のコートへ向かおうとするが、背を向けた瞬間にコートから名前を呼ばれた。


「忍足!向日!!」


パチーンと指まで鳴らされたら振り向くしかない。
この3年間で嫌という程慣らされた習慣に素直に振り向けば、汗だくの跡部がいた。
先程まで相手をしていた日吉はコートでぐったり膝を付いている。
所謂、スタミナ不足で決着が着いたといったところか。

(…それにしてもえらいタイミングええな)


「何してやがる、コートへ入れ」

ビシィ!とコートを指差す。
依然息は切れたままだった。
流石に跡部と言えども、明らかにきつそうだ。

「自分、汗だくやんか」
「うるせぇ眼鏡、ウォーミングアップしてたんだよ」
「そら余計なこと聞いてすんません」
「フン…おい樺地」

「ウス」

すかさず樺地がスポーツドリンクを手渡す。
こいつもほんまに大変やなぁ、忍足は心の中で労った。
するとそれまで黙ってた岳人が、けっふざけんな!と叫んだ。何事かと岳人の方を向けば、ふんぞり反る姿が。
これはあまり良くない展開になる…忍足は心の中で悟った。

「なんだよ跡部、俺は侑士とやろうと思ってたのによ」
「アーン?」

岳人は岳人で何言うてんねん。
せっかく跡部が空いたっちゅーのに、心にもないこと言い寄ってからに…見てみい跡部の眉間、皺寄ってんで。無意味に怒らしたで。なんやのこの子ら。

「よりによって…忍足だと?」

(こっち睨んでるやん…なんで俺やねん)

忍足が内心で突っ込むも、二人の間には険悪な空気が流れる。


「今日はダブルス強化って言っただろう」
「だから、侑士とやるんじゃん。お前はひよっ子とラリーでもしてればいいだろ!いいからシングルスしてろよ」

「…日吉、死にかけとるけどな」

コートに置き去りにされた日吉がラケットを握ったまま倒れ込み、「まだだ…下剋上、下剋上…」と呟いとる。
あ、宍戸が介抱に向かいおった。
鳳も後を追うんやな。お前らほんまに仲ええな。

「日吉は終わりだ、後はお前ら…」
「嫌だ」
「…なに?」
「俺は侑士と二人でダブルスの練習する!!」

一気に捲し立てる岳人、板挟み状態で焦る忍足の腕を掴む。

「ちょ、岳人…引っ張ったらあかん」
「いいから早くやろうぜ」
「せやかて岳……!」

刹那、違う腕によって払われてしまった。

「岳人」

「っ…跡部!」

割って入ってきた跡部は忍足の腕を掴む岳人の腕をぐっと握り、離すよう促す。
力が入っているのは見ているだけでわかった。
唖然とする忍足を放って、珍しく下の名前で呼んだ跡部の表情はすこぶる不機嫌だ。
忍足にはさっきまでの岳人の表情と重なって見えたが。


「いいから入れ…俺様に逆らうんじゃねえよ」

そうして珍しく人前でぶちギレた跡部は、本気の命令口調で言い切った。
これには岳人も驚いて、瞬時に忍足から手を引く。


(…またか)


部員らはこの二人の様子にざわざわ騒いどるが、レギュラー陣からすればいい迷惑や。
跡部は岳人とよう衝突する。
理由は、互いに勘違いから生まれる嫉妬心や。
それを知ってか知らずか……多分知らんからこないなってんやけど。
俺らからすれば勝手にせえいう話や。
せやけどこいつら、素直やない。
結局俺らは、どうにかならんかと影ながらフォローする日々や。


「…俺は何もしとらんからな」
「うるせえわかってる」
「………。」

お前はオカンに逆らう反抗期真っ盛りな息子か何かか。
忍足の文句は心の内に消えた。
とりあえず場は収まったようだ。
岳人にチラッと視線を送り、軽く宥める。

「たまには素直にならな、あかん時もあんねんで」
「わかったよ、やりゃいいんだろ!?やれば!」

最初から素直に言うとけば、跡部もあんな態度を取らずに済んだろうな。

やれやれと忍足は二人から離れ、普段の持ち場に着く。
一方跡部は、同じくコートへ向かう岳人の頭に何を思ったのか手を添えた。

「うおっ…んだよ跡部、まだ文句あんのかよ?」

いきなり後ろからがっと手が置かれれば驚く。
後ろにいる跡部を見ようとするも、力が加わって振り向けない。
そんなに怒ってんのかとジタバタ足掻いてみようと思えば、わしゃわしゃと髪を撫でられた。無意味に。


「待たせて悪かったな」
「!」


それだけ言って、さっと離れた跡部。
岳人はと言うと一瞬唖然としてみせたが、すぐに顔に熱が集中したのか赤くなっとった。
そうしてよーし行くぜ!なんて、途端に元気溌剌や。

ほんまに何やの、こいつら。



こうして二人の勘違いは解消された訳だが、
レギュラーメンバーからすれば相変わらずのいい迷惑に過ぎなかった。
間近で見ていた忍足すら、思わず目を伏せるくらい。






そしてレギュラーメンバーは心から思うのだった

(いい加減くっつけばいいのに)












「あないに露骨なことしとって付き合うてないって…おかしいやろ!?」
「忍足、その気持ちわかるぜ」
「なんや宍戸、お前もか」
「むしろ全員だろ」
「…せやな」






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ごめんなさい、ちょっとラフになり過ぎました(笑)

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