06/08の日記

02:06
跡岳:止まらない感情の果てへ
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付き合っている相手の事は何でも知っておきたいし、常に把握していないと嫌だ。

クラスメイトの女子が言っていた言葉。

そいつはまあ、見るからに束縛するタイプで自分の思うように相手を懐柔したい奴だ。
一見活発で後腐れない性格だけど、やっぱり女子は女子。
不安になればなるだけどんどんマイナスになって落ち込んでいく。
そんな、俺には似つかない純粋で可愛らしい恋愛相談を半分真面目に半分聞き流す状態。
とりあえず適当なアドバイスをするも、今度は俺への質問ラッシュ。女子はなんだってこんなに話したがりなのか。俺の姉ちゃんもそうだけど、話題がコロコロ変わったり態度もコロコロで正直すげえ根性だと思う。
さっきまでの落ち込みようは演技か?

そんな、何処にでもある日常を経て放課後に至る。



今日は、朝会で姿を見て以来会ってもいないし話してもいない。

誰に、って?
この学園の生徒会長兼テニス部部長にだよ。

思えば、テニスを覗けば接点なんてあったもんじゃねえ。
俺とあいつ、性格も生き方も価値観も何もかも違う。そんな奴と微妙な恋愛関係になってる俺も俺だけど。何を思って付き合ってるのか、あいつの本音は未だにわからねえ。
ただ「欲しい」と言われたからくれてやった、それだけ。好きとか愛してるなんて甘い言葉は一度もない、もちろん俺も言わない。
俺から求めるような真似は、何もしてない。

好きな相手のことは把握していたいという気持ち、正直よくわからない。
女子達には冷たいって非難されたけど、だからって四六時中べったりは嫌だろ。自分の時間を投げ捨ててまで相手に尽くす気にもなれない。

ぼんやり考えながら渡り廊下を歩けば、ポケットに入ったままの携帯バイブが鳴った。
このリズムはメール。慣れた手つきで開けば、差出人はあいつ。

【生徒会室に来い】

ただでさえ無機質なメールに飾り気のない文章。
いつもそうだ、だから気にしない。


「言われなくても…もう居るっつーの」


そして偶然、俺はこいつに会おうとしていた。目の前に聳えるのは生徒会室と書かれた教室。同じ教室がずらっと並んでいてもここはいつも異質だ。職員室より入りにくい場所。
前にノックをしろとしつこく言われた事があったから、今日は二回程ノックをした。瞬時に了承を得ることが出来たから、堂々と中へ入る。

「早いじゃねーの」
「ちょうど向かってたし」
「へえ」
「別にお前の為じゃないぜ」

調子に乗るから早めに牽制する。
生徒会室にあるデスクに席を構える跡部。
そろそろ生徒会の役割も終える時期だ、引き継ぎ業務とか色々とあるんだろ。
よく見ると少しぐったりしてる気もする。
何事も馬鹿みたいに仕切っておまけに責任感がある奴だから、もしかして張り切り過ぎてんのかも。
生徒会だけじゃなく、テニス部のことだってあるしな。

「なぁ、いつ終わんの?」
「もうすぐだ」
「じゃあ、待ってる」

生徒会室には何故かフワフワの来客用ソファーがある。
躊躇うことなくそこに座ると、もふりと体が沈んだ。確か跡部の部屋にもこんなのあったよな…となんとなく考えていたせいか、危機管理能力に欠けていた。

「なん、…」

気が付いたら視界が真っ暗で、唇から酸素が取り込めなくて。
つまり口が塞がれたわけで。
滅多にしてこないフレンチキスだ。2、3度リップ音を立てるだけのキス。いつもはもっと、物凄いキスをしてくるくせに。

「…なんだよ」
「なんとなくだ」
「はあ?…んだよ、それ」
「さあな」

覆ってた体はあっけなく離れて、隣に腰掛けたと思ったら膝に跡部の顔があった。
これは…もしかしなくても膝枕?
男同士でまさかするとは思わなかったけど、とりあえず今日の跡部は変だってことはわかった。

「お前、マジでどうしたんだよ」
「別にどうもしねえよ」
「やけに素直だし」
「正直者と言え」
「もしかして甘えてんの?」
「………」

黙ったってことは肯定的に取っていいんだよな?
一瞬、眉間に皺を寄せた跡部の表情を見逃さなかった俺。跡部は顔を隠すように片腕を顔の上に置いた。ずるいぞ、それ。
いつもはツンケンしてて自信家で俺様で大変な奴だけど、実はこういう一面もあったりする。全員に見せてるわけじゃないけど、少なくとも俺には見せてる一面だ。

ふと、女子の声が呪文のように脳内に響いた。

だけど、すべてを知りたいと思わないし独占したいとも思えない。俺は、みんなの前で堂々としている時の跡部が好きだ。それに、こうやって遠回しな甘え方をする二人きりの時の跡部も好きだ。別にこいつが俺の側に居なくたって、例え俺の事が好きじゃなくても…俺の気持ちはここから変わることがない気がする。

なんてことをダラダラ考えていたら、規則的な寝息が聞こえた。
目下の跡部を盗み見ると腕の隙間から寝顔が見えた。
嘘だろ…マジで寝てんの?
こんな所を誰かに見られたらやばいってもんじゃねえ。そういや此処は生徒会室だから、生徒会の奴らが来るかも知れない。だけど時刻は夕方。こんな時間に残る生徒会員は基本的にいない。
なら大丈夫かと、俺はまた跡部の寝顔に視線を向けた。
恐る恐る髪に触れてみたら、意外と柔らかくてサラサラしていた。自分から跡部に触れたのはこれが初めて、いつもは跡部からで自分からはしない。

「欲しい」って言葉にどれだけの気持ちがあったのか。何回も考えてみたけど結局は本人にしかわかんねぇよ。変に期待してる俺は只の臆病者で、好きだってことも伝えられずにいる。

「…でも、本当はお前のことめちゃくちゃ好きなんだぜ」

声に出したのは多分初めてだ。
寝ている相手に、ってとこがまた臆病者全開だけどよ。いいだろ、口に出すって勇気いるんだよ!

「へえ、俺様の事が好きで好きでたまらねぇのか」
「そうなんだよ……って、うえ!?」
「心地いいクラシックを聴いてる気分だったぜ」
「跡部…!」

最悪だぜ!!!
こんなにも全力で逃げたくなったのは小さい時にイタズラをして逃げた時以来だ。
ニヤリと口元に笑みを溢す跡部は俺の告白をばっちり聞いたっぽい。いや、絶対聞いてただろ。だってすっげえ調子付いてる。何がクラシックだ、ふざけんな。
膝枕から解放されて逃げようと思ったけど、跡部はそれを許さない。
気が付いたら腕の中、今日は慣れないことばかりしている気がする。
耳元に掛かる吐息がくすぐったくて身震いする俺を余所に、跡部はとんだ爆弾発言をした。



「俺様も、テメェが好きだ」









それは、初めての感情。
またも女子の言葉がループする。
あんだけ否定してた俺だけど、今やっとわかった。
きっと我慢してたから気付けなかったんだ。








目の前にいる好きな奴を、自分だけのモノにしたくて仕方ない。





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不完全燃焼…!
結局、私は何が書きたかったの。。。
ちょっとさっぱりな跡岳を目指していたのに
軽く片思い、そして両思い!
みたいなお話になってしまいました。

サブタイトルは
「岳人、束縛に目覚める」です(笑)


跡岳どこかに落ちてないかな。。(本気)



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