06/06の日記

02:11
日岳:背伸びをせずにはいられない
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ちょっと目を離すと居なくなる。
しっかり見ていたとしても、簡単にすり抜ける。
その癖、本気で縛る気も怒りたい気持ちも湧かせない。

この人には正直うんざりだ。



「ひーよーしー!おい、待てよ!」
「………。」

今日もその次の日も、この人は俺を苛つかせることばかりする。
所謂、俺を怒らせる天才だ。

今日の部活も酷かった。
目の前でビョンピョンピョンピョン跳ね回って、少しはカバーする側の気にもなってもらいたい。

だけど本当は、そんな事に苛ついてる訳じゃない。

俺とのダブルスが終わった後、忍足さんと組んだこの人は途端に変わった。
動きが良くなったし、なにより忍足さんが上手くフォローに回っていた。
この人の良い所は最大限に活かして、足りない部分は補って。
互いに信頼し合って、ダブルスらしいダブルスをしていた。

当たり前だ、元々この二人はダブルスを組んでいたダブルス専門だ。
息が合っているのも当たり前だし、
弱点をフォローし合ったり、抜群の連携を見せたりするのもそれなりにやって来たからだ。

だけどそれが酷く気に食わない。

それは俺が向日さんの事を好きだからだ。
変なプライドが沸き上がる。
俺だって本当は忍足さんみたいに上手くフォローしたい。
だけど現状では出来ていない。
そんなつもりはなくとも、二人が一緒にいるだけで見せつけられてるようにしか思えないんだ。

それなのにこの人は、俺に構おうとする。

「日吉、悪かったって!今度はちゃんとフォローするからよ!」
「は…?何言ってんですか、フォローするのは俺ですよ」

あんなにピョンピョン跳ねておいて、何がフォローだというんだ。
足を止めて向日さんを少し睨んでみた。
これくらいの反抗、見逃してくれてもいいだろう。
だけど向日さんはため息をついて、しょうがねえとか何とか呟く。
しょうがない?どういう事だ。

「俺はお前の先輩なんだから、俺が引っ張らなきゃ意味ねーんだよ」
「…は?」
「だから、普通は先輩がフォローするもんだろ!だけどお前のが、その…上手いし?ついいつもの癖で頼っちまうっつーか…」
「…はぁ」

話していく内にもじもじとし出す向日さんの姿に、思わずため息が溢れた。
これは俺自身に対してのため息だ。

向日さんは先輩だからという理由で俺に頼る気は微塵もないらしい。
だけど結局は俺に頼っていたみたいだ。
いつもの癖でということは、少しは俺のプレーも信用してもらっている証拠にも繋がる。
だったら、

「なら、そのまま頼ってください」
「へ?」
「ダブルス。忍足さんみたいにはいかないでしょうけど、俺は俺のやり方でアンタを活かしますよ」
「へっ、ひよっこが言うじゃん」


そのひよっこに甘いアンタはなんなんだ。


ただ、俺にもあんな風に頼ってくれるのなら
こんな背伸びくらい、いくらでもしたっていい。

心から思った。














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ツンツン日吉。
うちの日吉はなんでこんなにツンツンなんでしょう。。。
シングルスとしては一流でも、
ダブルスではまだまだ三流な日吉の話でした。
自分を見て欲しいが為に岳人に対して背伸びをして見せる日吉とかいいと思います!



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