06/05の日記

01:25
忍岳:彼が初めて見せた嫉妬(ちょっとお馬鹿な忍足)
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忍足侑士の眼鏡が伊達ということはレギュラーメンバーであれば皆知っていることで、特に知っていてもそんなに重要なことではない事だ。

だけど彼にはとても重要なことだった。







しもた、眼鏡がないとあかんかった。
なんで割ってもうたんやろ、今度からスペア用意しとこ。


忍足侑士が眼鏡を掛けていない
朝からそんな話題で持ちきりだった。


「忍足くん眼鏡は?」
「侑士くんは眼鏡ない方がいいよ!」
「うんうん、目も綺麗だしね!」

「ほんまに?でもそんな見んといて、恥ずかしいねん」

「「「キャー!!」」」


…何がキャーやねん、アホちゃうか。
朝から女子が俺ん所にぎょうさん集まっとる。
クラスメイトのみならず他のクラス、果ては後輩まで。
なんやねん、何がそないに珍しがる必要があんねん。
そもそもあれは伊達や。
…言うても、公言はしとらんのやけど。
クラスの端に居る男子の集団がうらめしそうに視線を送ってくるんもええ加減腹立つわ。
俺かて嫌やねん、察しろや。

「俺行くとこあんねん、堪忍な」

こないな状態やから、まだ岳人と会ってへん。
岳人はこんな事で妬くような奴やないから、俺から来るのを待っとるはずや。
早よ会いたい。
正直、岳人不足で目眩がしてきたとこや。

痺れを切らした俺は女子を放ってクラスを後にした。
途中、岳人のクラスを寄ってみても宍戸やジローのクラスを覗いても岳人は何処にも居らんかった。

それなら…行く場所は1つやんな。






屋上に着くとさあっと風が吹いた。

来ることにも慣れた場所には赤髪のおかっぱが居った。
壁に寄りかかってぼけーっと空を見とる。
声を掛けるか、脅かしてみるか。
どないしよかと思うとったら…

「侑士?早く来いよ」
「…気付いてたんか」
「バーカ、バレバレだっつの」

顔だけこっち向けた岳人。
逆光で表情はようわからんが、あまり機嫌が良い感じやないことだけわかった。
ゆっくり岳人の近くまで行くと方膝立てる岳人の前にしゃがみ込む。
相変わらず綺麗に整った髪に手を置いた。

「朝、会いに行けんで堪忍な」
「別に。つーか眼鏡は?」

すっと左手が俺の頬に添えられる。
岳人が怒っとる理由、少しわかってきたわ。

「割ったしもた」
「馬鹿じゃねぇの」
「せやなぁ…お陰で朝から女子の皆さんが凄いんや」
「知ってる。うちのクラスの女子も凄かったぜ、美形美形ってうるせーんだよ」
「そら迷惑掛けて悪かったな」
「本当にな!腹立つからこれでも掛けてろよ」
「!」

岳人がポケットから取り出したもんは、100円ショップで売っとるような鼻眼鏡やった。
おそらくジロー辺りからかっさらって来たんやろ。
ちゅーか丸いフレームしか合ってへんやないか。

「…ガックン冗談きついわ」
「だって、お前顔見られんの嫌いだろ?それにな…」

隙を付いて岳人に唇を奪われた。
なんやろ、今日は嫌に積極的やな。
これも妬いとるせいなんか?

さっと触れるだけのキスをした岳人は、じっと見つめながら何も出来ん俺に爆弾をかます。





「侑士の素顔見ていいのは、俺だけなんだよ」


「が、岳人…!」




それは俺にとっては初めての感情やった。

明らかにウケ狙い抜群の鼻眼鏡でも、
岳人が嫌ならこの際何でもええ、掛けたるわ。










その日、鼻眼鏡を装着し悠々と1日を過ごす忍足の話題で学園中が大騒ぎだったとか。













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自覚のない束縛をする岳人とちょっとお馬鹿な忍足さんの話。
岳忍ではないよ忍岳だよ!



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