05/28の日記

23:11
日岳:雨に隠れる
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どんよりとした曇り空は嫌いだ。
どしゃ降りになれば、それだけで最悪な一日へと変わる。

部活が出来なくなるし、服は濡れるし、湿気が強いと髪型も不調になる。
雨が降って良いことなんてまずないだろう。
今までもこれからも、そう思っていた。


授業も終わり、今日は昼に終わるシステムでおまけに部活もない。
久しぶりの休みでも、生憎先程から雨が降っている。
お陰で何処かに出掛けようという気にもならない。
ため息を吐きながら履き物を変えると、出入口に見慣れた影が見えた。
本来、三年生は二年生の出入口を使わないが。
それを理解した上で声を掛けた。


「何してるんですか、向日さん」
「お、日吉!終わったか?」

声を掛けるなりこちらに向かって手を振る。
さほど遠くもないのに…こういうところは向日さんらしいというか。

「終わったって…俺向日さんと約束してましたっけ」
「いーや?してねえけど」
「じゃあなんですか」
「雨降ってんだろ!傘忘れたんだよな、今日」

そう言って外を指差す。
霧雨なんてものじゃなく、外は相変わらずのどしゃ降り模様。
朝は曇り空だったが、それでも雨が降ることくらい予想出来ていたであろう。
面倒な性格が災いしたのか、目の前に佇む小さな先輩はどうやら傘がないらしい。

だったらクラスメイトにでも借りたり一緒に帰ればいいだろうと思ったけれど。
それはそれで何だか面白くない気がしたから言わないでおこう。
俺はため息をを吐きながら持っていた傘を解いた。

「天気予報見なかったんですね」
「そんなもん毎日見るかよ」
「そうですか」
「携帯でも見れんじゃん。入るぜー」

当たり前のように傘に入ってきた小さい先輩。
いくら傘が大きくてこの人が小柄でも、双方の肩に雨が掛かる。
なるべく掛からないようにと肩を引き寄せようとしたら、向日さんから胸に寄りかかるような姿勢を取ってきた。
一つの傘に二人の体、取っ手を持つ手が微かに震えたのは明らかに俺の動揺だ。
そして意図がわかった。



「…なんとなく、アンタの考えることがわかりましたよ」

胸の中にいる向日さんは、流石だなと嬉しそうに笑った。















雨が降る日は苦手だ。

服は濡れるし、髪型は決まらないし、良いことがない。


それでも今、この人が此処にいるだけで。
二人だけの世界に居るような感覚に浸れる。
人前でくっついたりするには気が引けるが、今日みたいな理由がある日は堂々と歩いてもいいだろう。



どうやら、雨の日でも良いことはあるらしい。




















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午前中が悪天候過ぎてあれだったので。
傘は魔法のアイテム(…だと思っている)




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