!! HAPPY BIRTHDAY !!

□Feelings Change.
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「いいかお前ら、今日は久しぶりに朝まで盛り上がるぞ!」

跡部の一言でおぉー!と盛り上がる俺達。
普段は趣味も思考もバラバラな俺らは、こういう変な所できっちり纏まったりする。
自分で言うのもあれだけど傍から見ればすげえおかしな連中だ。

退場ゲートには跡部が用意した車が佇んでいる。普段から部員の誕生日は何かと世話をやいて終いにはパーティーを開く跡部だから、俺の誕生日もパーティーだ。
しかも明日は土曜。
跡部も俺らもノリノリの夜通しコース。

みんなは先に車に乗り込みだした。
俺達も早く行こうよ〜と手を引くジローに返事をしながらも、やっぱ先に乗っててと断り手を離す。

「跡部!」
「お前はあいつらと先に行ってろ。樺地、お前は来い」
「ウス」

樺地に何やら指示をしている跡部に声を掛ければ一蹴された。さっきまでの空気は何処へやら。

「お前は?」
「俺様は後から…」
「嫌だ、跡部も一緒に来い」
「あぁ?」

後から合流すると言われる前に、岳人は跡部の手を掴んだ。離さないようにぎゅっと。

誕生日プレゼントはちゃんと受け取った。
みんな来てくれてすげえ嬉しかった。
今日は15年間生きてきた中で一番の、最高の誕生日だと思う。
でも、

「でもさ、お前だって誕生日プレゼントの一部じゃん。だから一緒に居ろよ」

「…ククッ」
「っ…なんで笑うんだよ!」

人が真剣に言えば笑われた。
でもそれは嘲笑うとかじゃなく、楽しそうな笑いであって。

「テメェは本当に仕方のない奴だ」

そう言って、掴まれていない方の手で頭を撫でてくる。仮にも今は俺の方が年上なのにこの子供扱いっぷり。

「…なんだよ、それ」
「単純バカって意味だ」
「んだと!?」

このまま喧嘩が始まりそうになる瞬間、退場ゲートの方から俺達を呼ぶ声が聞こえた。窓から顔を出したレギュラー達がこちらに向かって早く来いと叫ぶ。


あいつら何してんねん!、岳人もたまにはやるねー、跡部の邪魔したら殺されるC〜、俺は下剋上にしか興味ないです、仲が良いのはいいことですよ。宍戸さん!、そうだな長太郎!、青春というやつだ、樺地。、…ウス。


各々が好き放題な事を言っている。
つーか樺地、お前いつの間に向こうに乗り込んだ?…ま、いっか。
あいつら…勝手な事を言いやがって、と舌打ちした跡部に珍しく俺も共感した。全くその通りだぜ。


「岳人」
「ん?」

退場ゲートへ向かう途中、足を止めた跡部の方へ振り向けば小さな箱を渡される。

「なんだよ、これ」
「首輪だ」

「…は?」

呆気に取られる俺に渡した箱を自ら開封する。中から細いシンプルな指輪を取り出すと、半ば無理矢理はめられた。右手の薬指に金色の細い輪が煌めく。

「お前は何処に跳んで行くかわからねぇからな、首輪を付けといてやる」

相変わらずのどや顔。
そんな表情にももう慣れた俺だけど、これはちょっと予想が出来なかった。
退場ゲートにいるあいつらからは冷やかしからか「結婚」というワードが上がる。
馬鹿、さすがに跡部相手でもそれはない。
第一男同士だぜ、俺ら。出来ねえよ。

そんな俺に気付くことのない跡部は、今度は俺の左手を取った。
なんだよと言おうとするも、いきなり出したその真剣な眼差しに何も言えなくなる。


「此処も、俺様のモノだ」

その言葉と共に唇が寄せられたのは左手の薬指。
左手の薬指の意味はそう、あいつらが口にしたあれだ。

…って、待て待て。嘘だろ、冗談だろ?
まさかこいつ本気で…


「言っとくが俺様は離す気なんてねえからな」


恐る恐る跡部を見上げると満足げな表情で余裕たっぷりな笑みを見せられた。
覚悟しておけよ、と念まで押される。

こいつ本気だ。



「誕生日おめでとう」


手を引きながらついでみたいに言われた祝いの言葉がなんとなく痒い。今日初めて言われた祝いの言葉、それよりもサプライズが凄すぎて俺の頭の中はもういっぱいいっぱいだ。








俺は今日15歳になった。
部活を引退してから数日、色々と思うこともあって俺も少しは大人になってきたんじゃねーかって思ってみたけど全然変わってなかった。

時間は確実に流れてるから歳だって取る。
これから先、状況や環境だって少しずつ変わってくかも知れねぇ。
今のまま大人になれたらそりゃ良いけど、そういう訳にもいかねぇって解ってる。
だけどよ、変化の中にも変わらないモノだってあるんだぜ。

例えば同じ時間を共有した仲間達との絆とか。
普段から口が悪くて傲慢でセレブでどうしようもなくアホな恋人とか。

保証は何処にもないけどこれだけは変わらない気がする。
俺の気持ちも変わる気がしないから余計にな。





「跡部」
「なんだ」
「俺、今すっげー幸せ」
「バーカ、俺様が居るんだ。当たり前だろ」




本当に良かったぜ、お前が居て。
きっとこれから先も、俺はこの幸せを続けていける。













HAPPY BIRTHDAY GAKUTO!!





Fin

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