お題 A×G

□見惚れてんじゃねえよ
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付き合ってる二人、ほのぼの

庶民らしい休日デート。








『次の休日は久しぶりにどっか行こうぜ!』


最近はテニステニステニスとテニス三昧で、二人の時間が中々取れなかったわけ。
まぁ俺らは部活も一緒だし?
常日頃から一緒に居るようなもんなんだけどさ。
でもやっぱ、たまには恋人らしいことしてーじゃん?どっか行ったりとか、二人でテニス以外の事したりだとか。それだけでも全然違う。

だから俺、昨日の部活が終わった後に思い切って言ってみたんだよ。
たまにはどっか遊びに行こうぜ、って。
したらあいつ何て言ったと思う?
『そうだな…たまにはヨーロッパの方もいいな』とか抜かしやがった。
国外かよ!金持ちの頭ん中怖ぇ!つーか1日で帰って来れんのかよ!

やたらと国外に行きたがる跡部をとりあえず黙らせて、たまには俺に付き合えっつたら意外とすんなり聞いて貰えた。…珍しくね?行き先もプランも全部俺任せ。跡部は俺に任せるって言ったきり、ずっと俺の提案を黙って聞いていた。たまに口端上げてたから、よっぽど機嫌でも良かったんだろうな。

そんな訳で今日は、跡部と色んな所に行ってきた。
無駄に派手なこいつを少しは庶民らしくしてやろうと思って、とにかく色んな所に連れていった。
部活帰りに寄る商店街のコロッケ屋とか。
最初は文句タラタラだったけど、いざ食ってみたら味が気に入ったらしく店ごと買い取ると言い出したから必死に止めた。おばちゃんごめんな。
新しいスニーカーを見に行った時は、気に入ったモノを見つけたと言ったらこれまた店ごと買ってやるとか言い出し、また必死に止めた。おっちゃんマジごめん!


結果、金持ちを庶民にするのは中々難しい。
…つーかこいつは無理!!


心ん中でうなだれる俺を余所に跡部は割と楽しんでいるみたいだった。
庶民の生活なんざこの俺様には合わねえ!
等と怪訝そうな態度を取っていても背中は楽しいと語っている、俺にはわかるぜ!

でも俺は徐々にモヤモヤしてきた。
跡部と歩いていると必ずと言っていい程に視線を浴びる。
学校でも常に跡部は注目の的だ。
特に女子達からの熱い視線の一人占めは凄まじい。
それは学校だけではなく、普段からそうであって仕方ないんだけどな。

商店街に似つかないこの風貌。
元々整った顔をしているこいつが、対照的な俺と並んだら尚更引き立つに決まってる。

視線を浴びる事に慣れている跡部は気にしてないだろうな、でも俺は気になるんだぜ。
学校でなら仕方ないっつーもんもあるけど、久しぶりの休日で久しぶりの二人きりで久しぶりの外出なのに周りの視線が気になる。
そう、邪魔とさえ思うくらいに。

…あれ、俺ってこんな独占欲強かったっけ?



「なんだ?」

「へ?」

「さっきから俺様の顔を見ているだろ」

考えながら跡部をガン見していたらしい。
目線だけ寄越す姿も絵になるなぁ、なんて俺らしくもなく見とれていた瞬間…すれ違い際の女二人の会話が耳に入った。


「きゃーっ、今の人カッコイイ!」
「ねぇ、声掛けてみよっか?彼女いるのかなぁ」




だーっ、くそくそ!
もうなんだってんだよ!!


「跡部、俺テニスしたくなった!」

「…アーン?」


道の真ん中で大声で叫ぶ俺に、跡部は何事かと歩みを止めて俺を見る。

気付いたら俺は、眉を顰めた跡部の手を引いて連れ出すように走り出していた。



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