跡部→岳人
「は?」
恐らく俺は今、とてつもなく間抜けな顔を晒している。
しかし、それは目の前で偉そうに踏ん反り返るこの男のせいであって、いっそ間抜けなのはこいつの方だ。
「アーン?聞こえてなかったのか」
「聞こえてたよ。でもちょっと待て、質問の意味がわからねえ」
やっぱり間抜けなのはこいつだと思う。
何処か不満げで、怪訝そうにこちらを覗いて来るその無駄に整った面をぶん殴りたい。
そんな衝動をありったけの理性で抑え、何事かと跡部を見上げる。
今日も一日、授業や遊びに取り組み、残るは部活動のみ。
いつものように練習に励み、今日もよく跳んだぜ!と一日を振り返りながら帰り支度をしていたらこれだ。
「お前、彼氏いないだろ」
突然の質問に怪訝になりたいのはこちらの方だ。
他の部員も、いつもは跡部の後ろにべったりな樺地さえも居なかったからよかったものの。皆がいる時だったら大変な事になっていた。コンビの忍足の耳にでも入ってしまえば一週間はからかわれ続けるだろう。そんなの御免だ。
「つーかそういう問題じゃ…」
「なんだ、言ってみろ」
さも当たり前のように聞いてきたこいつの神経は一体どうなっているのか、岳人には到底理解が出来なかった。
「だからよ、その『彼氏』ってのがおかしいだろ!そこは普通『彼女』じゃねぇ?」
「ああ、そんなことか」
「そんなことじゃねーし!」
「で、どうなんだ」
「は?」