!! HAPPY BIRTHDAY !!

□ちょっとした日常に、ほんの少しの特別を。
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朝起きてからまずすること。
コーヒーを淹れる為にお湯を沸かす。
朝食は軽く済ませるので、パンを一枚焼く。

…それから、
パソコンの電源を入れて部活専用サイトを開くこと。



卒業前にもう一度テニスを。
期待を胸に旅立ったみんなを見送ってから、もう何日経っただろう。
それからの後輩指導を跡部から託され、日々部活に追われる日々。

(本来だったら俺ら、もう引退なんだけどね)

指導する事に対して抵抗がある訳じゃないけれど、跡部みたいな統率力がない自分にとってはあの人数を一気にまとめろと言われても大変なことだ。否、大変なのだ。
それでも毎日、頑張ろうと思うのは…
この部活専用サイトに書き込まれる部員からのコメント。下らないことから大事なことまで毎日欠かさず書き込まれていく。
一年の時から引退まで、共に駆け抜けた仲間達。今は違う場所にいるけれど、みんなも頑張ってるなら俺も頑張らないとね。

「さて、今日はどうかな」

あっという間にお湯は沸き、インスタントコーヒーをそそぐ。
いれたての簡易なコーヒー片手にデスクに向かい、パソコンの電源を入れた。
カチッと慣れた手つきでページを開けば、そこには連日練習に励む仲間達のコメントが載っている。

愚痴を吐いていたり(これは主に岳人が)
他校の生徒と打ち解けた喜びが書いてあったり(ジローの丸井自慢)、実際にしたトレーニング内容だったり(普通の人間には無理なトレーニング方法だ)と様々だ。

それら一覧に目を通し、一人一人に返信していく。

岳人は日に日に跳ぶ高さが調整出来るようになったらしい。数日前には打倒侑士と燃えていたくせ、今じゃすっかり元のさや。これには忍足も内心安心したんじゃないかな?

(岳人よかったね。帰って来た時じっくり見せてもらうよ…と)

ジローは丸井と同じ勝ち組で大分テンションが高いらしい。

(卒業前に一度、立海と練習試合でもしておきたいね)

日吉は相変わらず下剋上としか書いていないし、鳳はやっぱり宍戸のことばかり書いている。

(日吉、お疲れ。下剋上もいいけどチームプレーも忘れずに。それから鳳、たまには宍戸離れしよう。宍戸も宍戸で、鳳に甘過ぎるよ)

そして部長の跡部は、自身のこともある癖にこちらの様子を毎日気にしている。何だかんだいっても跡部は面倒見もいいし後輩思いの良い部長だった。今もまだ、部長であるが。

(…かといって、跡部。こんなトレーニング方法取り入れたらみんな死ぬよ)

練習熱心なのもいいが、跡部が取り入れようとしている練習の内容は普通の人間にはまだまだ程遠い量のトレーニング法だった。
さすが化け物揃いの合宿、やるねー。

「…まあ、顧問次第か」

とりあえず顧問の榊に内容だけは伝えようとメモ用紙に簡単に記す。無理難題なトレーニング方法でも、それが結果的に氷帝の力になるのであれば取り入れるだろう。

ある程度コメントを返し、注いだコーヒーで一息つく。時刻は8時半、今日の練習は午後からなのでまだまだゆっくり出来る。

俺の朝はみんなへの報告と返信から始まる。その内容は、まるで幼稚園の先生が園児一人一人の手帳に記すソレのようだけど。氷帝学園テニス部の中でそんなことが出来るのも俺くらいしかいない気がする。レギュラー落ちした時は正直落ち込みはしたが、今となっては自分の役割を見つけることが出来て良かったと思っている。嘘じゃない。

「みんな個性強いしね……ん?」

誰に言った訳でもなく独り言を呟けば、パソコンの画面に新着メールの文字が浮かんだ。

差出人は跡部からだった。
件名も本文もなく、動画だけが添付されている。右クリックで再生すると黒と白に分かれたジャージを着たみんなが写った。何故か密着している。元々選抜ジャージ姿は写真で見ていたが、いざ氷帝以外のジャージを着ている姿を見ると雰囲気が違うものだ。
呆気にとられてしばし見つめていれば、中心にいる跡部がいつもの如く指を鳴らした。なんだか酷く懐かしい光景。
思い出に浸ろうとしたその時だった。


[[滝!誕生日おめでとう!!!]]



「…え、…」

思わず声に出して驚いてしまった。
画面いっぱいにぎゅうぎゅう詰まった仲間達は、画面の中でそれぞれがぎゃあぎゃあ騒ぎ出す。というか、今なんか言わなかった?おめでとう、って。


[オイ、本当にこんなもんでいいのか?俺様のヘリで会いに行…]
[だーっ、これだからお坊ちゃんは困るぜ!なぁ侑士!なんか言ってやれ!]
[せやなぁ…跡部はともかく、たまにはこういうのもええな。滝、どうや?感想は]
[滝滝〜!誕生日おめでとう!後は跡部と忍足だけだね、14歳なままなの]
[滝さん、お誕生日おめでとうございます!えっと、ちょっと驚かせてみようと思って…喜んでもらえましたか?]
[長太郎、大成功だぜ!おい若、お前からも何とか言ったらどうだ]
[宍戸さん押さないでくれませんか。…滝さん誕生日おめでとうございます]
[ウス。…おめでとうございます]
[よーしお前ら!今日は滝の分までとことん盛り上がって行くぜ!他校の奴らに負けんじゃねぇぞ!]

[[[オオー!]]]






「…って、後半から全然内容違うし」







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