番外編
□以外な一面
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『えっと、どうしよう・・・』
雅は一人、家の前で狼狽えていた
片手にはスポーツドリンクやゼリーなどが入った袋
手塚の家の前でチャイムを鳴らそうとしては止め、鳴らそうとしては止めの繰り返しだった
『でも、こうしちゃいられないよね・・・』
雅は意を決してチャイムを鳴らす
少ししてドアを開けてくれたのは手塚の母、彩菜だった
彩菜は雅の姿を見て目を丸くさせる
「あら?雅ちゃんじゃない」
『どうも。』
「でもどうして?学校は?」
『あ、その・・・心配で、早退を・・・・』
気まずそうに引きつった笑みを浮かべる雅
それに彩菜は苦笑して雅を招き入れる
「わざわざありがとう。じゃあ折角だからお願いしてもいいかしら?」
『?』
「主人ももう出てしまったし、お義父さんも今日も用事があったみたいでもう出てしまったの。
私も仕事なのだけど、国光を一人にするのもって思って」
『そうなんですか・・・。』
「でも雅ちゃんになら安心ね。国光をお願いしてもいいかしら?」
『はい!』
「良かった。それじゃあ台所は好きなように使っちゃってね。冷蔵庫に入ってる食材も好きなようにしていいから」
『ありがとうございます。行ってらっしゃい』
「えぇ、行ってくるわね」
雅は一礼し、彩菜を見送る
そして前一度来たことがある階段を登り、手塚の部屋へ入る
コンコン
『入るね?』
雅は静かに部屋へと入る
ベッドにはキョトンとした手塚が制服に着替えようとしているところだった
『な、何してるの!?』
手「雅・・・?何故ここに?」
『そんなものはどうでもいいの!!なんで着替えようとしてるわけ!?』
手「いや、学校に・・・」
『ダメに決まってるでしょ!?』
雅は慌てて手塚の熱を測る
『38℃・・・・・』
手「・・・・・・」
『思いっ切り高熱じゃないっ!!』
そんな状態で行こうとしていたのか・・・
雅は脱力したくなった
『病人は大人しく寝るっ!』
手「だが・・・」
『つべこべ言わずに従うっ!』
まるで鬼の形相
雅は渋る手塚を何とか寝かせる
『もう、こんな状態で来られてもみんなに迷惑掛かるでしょ?』
手「だが・・・部活もあるし」
『そんなの、今日くらい秀くんに任せられるでしょう?
そんなことよりも、今日一日寝て英気を養って明日復帰した方がいいでしょう?』
手「・・・・」
雅の言うことは正論なので、何も言えない手塚
熱のせいでもあるのか、少しボーッとしている
『とにかく、後のことはいいから大人しく寝てて?』
手「だが・・・」
『私の言うことが聞けないとでも?』
背後に黒のオーラを漂わせて微笑む雅
有無を言わさない雅に手塚は折れた
手「・・・済まない」
『いいのよ。私がしたくてやってることだもの。』
手「・・・ありがとう、雅」
『いいえ。』
そして少しすれば聞こえてくる寝息
雅は少しホッとして手塚の手を握った
熱のせいでいつもより熱い大好きな手
『早く良くなるといいよね』