キミという名の光の中で

□番外編「一つの約束」
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サァァ


『……………』




風が吹き、一人の少女の髪を揺らす
緑に囲まれた庭でただ一人佇む儚げな少女




黒「――雅」

『…黒刀』




名を呼ばれ、そっと振り返る
そこには戒めの手である蓬莱黒刀が居た




黒「こんなところにいたのか。」

『…少し、外の空気が吸いたくて……』




切なげに微笑む彼女の名は玖音雅
細っそりとした体は力強く抱けば壊れてしまいそうなくらい儚い
黒刀と呼ばれた少年はそっと歩み寄り、雅の隣まで来る





黒「薄着だと風邪引くぞ。」

『大丈夫よ。』




ふわりと微笑む彼女にムッとする黒刀
彼女は元々体が丈夫ではない
この前も薄着で月を見上げていたから風邪ひいたというのに…




『力はまだ…戻ってないわ…』

黒「……………」

『夕月は…どうしてるのかなぁ……』




空を見上げ、ポツリと呟く
黒刀はそんな雅を見て、どう口を開こうか迷っていた




『みんなも…元気かなぁ…』




ポツリと呟かれたその言葉には寂しさが感じられた
それには黒刀も言葉を失う

本来ならば雅は中学生として、黄昏館で暮らしているはずだった
けれど、一族の反対にあい、彼女はずっとここに閉じ込められているのだ

そして、彼女はそれを受け入れている――





黒「……この前」

『?』

黒「叢雨姉弟に会った」

『!』

黒「いつも通りだ。」

『――そう…』





黒刀の言葉で安心したように微笑む雅
彼が自分を元気づけようとして言ってくれたのは知っている
だからこそ、彼の優しさと皆が元気だと知って嬉しく思う




千「――雅ちゃん」

『千紫郎さん…』

千「電話だよ、彼から」

『!』




千紫郎は優しく微笑み、電話がある方を指差す
゙彼から"という言葉に顔を明るくさせる雅




黒「言ってこい。」

『うん』




嬉しそうに笑い、雅は屋敷内に戻って行く
それを見届けて千紫郎は笑いを浮かべた





千「嬉しそうだったね、雅ちゃん」

黒「それはそうだろ。」

千「うん。――これで、少しは元気になってくれるかな」

黒「…さぁな」





黒刀も屋敷内に戻り、自室へ戻って行く
千紫郎もそれに続く





 
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