君との軌跡U

□第46話「勝利と不安」
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桃「う〜ん……あ〜……」

『大丈夫、桃ちゃん?』



唸っている桃
雅は先程から時計を気にしながら桃の傍にいた
そろそろ黄金ペアの試合が終わる頃だろうか…
普通ならここまで気にならないが、大石の手首がどうしても気になるのだ
だがこんな状態の桃を放っておくのも…と頭を抱える雅



「雅先輩!」

『池田くん!?』



そこへ慌てた様子の2年部員が走ってくる
まさか誰か怪我でもしたのかと動揺する雅




『何かあったの?』

「それが……大石先輩の手首が…」

『!!』



そこまで言われれば想像が出来る
今すぐにでも行きたいが…
そう思い、雅はチラリと桃を見る
すると




桃「行って下さい雅先輩」

『桃ちゃん…』

桃「さっきよりは楽になったんで……」




だから行って下さいっス、と笑みを浮かべる雅
まぁ、桃はあまり大したことないので、その言葉に甘えて雅はコートの方へ走り出した
後を部員が追う




『説明出来る?』

「は、はい……実は」




部員の話によると、試合をしていて後もう少しという場面で大石が手首を抑えたらしい
その手首は赤くなっており、それでも試合を続けているという
だが恐らく大石が狙われているのだろう
状況は一気に不利だ




『(だから言ったのに……っ)』




雅は必死にコートへ向かう
大石にも、彼のようにはなって欲しくない
それがどのような状況であったとしても
約束したのだ
彼らのサポートは任せて欲しいと
だから――!




「「「ワアァァーーー!!」」」

『!』



その時、一際大きな歓声が上がった
そして雅が到着した時には試合は終わっていた
どうやら7−5で勝利したらしい
ハイタッチを交わす二人を遠目で見ていた雅




『秀くん!』

大「!! 雅ちゃん」




コートから出てきた大石に走り寄る雅
大石の手首は赤くなっていた




大「…その……ごめん……」

『もう……無理ばっかりして……』




嘆息した雅に項垂れる大石
だが



『ありがとう……国光との約束のために』

大「!!」



涙を薄らと浮かべた雅は優しく微笑み、お礼を告げた
大石がどんな思いで試合を行ったのかわかっているから…
だから止められなかった



『ありがとう…』

大「雅ちゃん…」

『英二もお疲れ様』

菊「ブイ!!」




笑顔一杯の菊丸に雅も自然と笑みが溢れる



これで一勝一敗
次はシングルス3、海堂と若人の試合だ



 
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