犠牲の花
□◇傷心◇
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◇傷心◇
どうしようもなく、落ち込んでた。バニシュで姿を消して、外に出た。城下町にも出るなと言われてたけど、ダメだ。彼らのあの酷く怯えた顔を見たら留まる事なんてできない。…エブラーナの人達は、どう思っていたのだろう?黒髪の事を知らない筈はない。やっぱり、恐ろしく思われていたのだろうか……ダメだ。こんなの考え出したらキリない。もう吐き気がする。この世界で、自分がどれ程恐ろしい存在かが知れない。
「恐ろしい…」
呟いた。そして何処へ行く訳でもなく、足早に歩いた。止まったら私はきっと力の限り叫ぶから。それに便乗して魔力が出てきたらなんて考えて、忙しく足を動かした。行き場のない憤りだけが募り、地面を蹴った。
「…ッくそ………!」
大人気ないなんて知ってる。融通が効かないのも知ってる。自分の器の小ささを思い知る。こんな器にクリスタル?やめてよ。大きすぎる
「さいてー…」
怖い。こわい、恐い。
涙が溢れて落ちる。だめだ。泣いたらダメだ。泣いたらもっと涙が出る。泣いたらもっと悲しくなる。溢れる気持ちが止まらない。どうにかなりそうで、怖くて堪らなくて、全力で走った。きっとバニシュももう解けてる。魔物達にも見えてる。もういっそ、走ったまま攻撃されて死にたい。消えてしまいたい。
─ 帰りたい。─
この世界に来てからと言うもの…初めて、心の底からそう思った。
***
「ッはあ…は……ゲホッ」
草むらに倒れ込んで、噎せながら不足した酸素を補給する。随分長い事走ってた気がする。でも、私の足なんかじゃ全然進んでないんだろうな…暫く此処で寝てたら、ゴルベーザさんが拾いにでも来てくれるんだろうか…目が覚めたら、またあのバロン城の部屋に居るのかな?…正直、もうどうでもいい。ぽろりと口からそうこぼして、目を閉じた。
もうイヤ。始まって間もないのに、まだまだ序盤、全っ然序盤なのに、もう嫌。
次→◇再来◇
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自己嫌悪
☆更新日15/2/5