犠牲の花

□◇結晶◇
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「アネモネ、どうした。」



驚いて静止していると、ゴルベーザさんが声を掛けてくれて意識が還ってきた。




「え?!あ、ごめんちょっと待って…」




とにかくあの声と話せるかを試みてみる。




───貴方はクリスタル?どこにいるの?



《──私は貴女の中よ。》



──中?



《──そう。貴女は私達の器。共鳴し合う存在。》





予想外な回答をありがとうございます。話せは(?)したけど私の中って…oh…現実的に考えてはいけない事ですね…




「ええと…クリスタルは、私の中にあるそうです…」

「は?一体何を言い出すのです。」

「私に言われてもクリスタルに聞いたんで私よく分からないです…」

「クリスタルから?クリスタルが話す訳がないではありませんか!」




答え返す度にベイガンが噛み付いてきてもう、うるさいわ!!!黙らんかい!このあんぽんたんめ!!!




「私から話そう。」




私とベイガンでぎゃんぎゃんしてたらゴルベーザさんがやっと口を挟んでくれた。




「黙っていた事を詫びよう。すまなかった。」

「?!」

「アネモネ。お前はクリスタルの器、この星の核だ。」




oh…なんと言う事でしょう…驚きと初耳だらけ…クリスタルの器ってのでもうとんでもないのに星の核ってなんぞ…いや、そのままの意味なんだろうけど…いらねぇだろ…この核器としてもいやに脆いぞ…




「故に、昨夜お前が体調を崩したのもミシディアのクリスタルがあるべき場所から離れた為だ。このままお前に渡さず別の場所に安直しても、それは確かにクリスタルを安全に保管出来るかも知れん。だが、アネモネ。お前の体調を損ね、星が弱ると言う危険があるのだ。」

「だから、私に?」

「そうだ。クリスタルを吸収する事で、お前自身の魔力も少しは安定するだろう。」




…なるほど、分からん!いやなんとなく、なんとなくは理解してるよ!でも全部はちょっと無理かな?!単純なんだろうけどなんか頭が働きたがらない…なんて酷い怠惰脳だ。でも1つだけ気になる事。




「あー、なんかとんでもない役なんだねぇ…なんか他人事みたいだわ。」

「そうか。」

「でも、クリスタルが定位置から離れる度にあんな調子の夢見るのは勘弁だわ。…これってさ、私が取りに行った方が星としても悪い事はないんじゃない?」

「なんだと…?」

「何を言い出すかと思えば…いかん!お主はクリスタル同様に扱わねばならんのだからな!」

「クリスタル同様とか…なんかもう重たいなぁ…」




溜め息を吐いて帽子に手を突っ込んで軽く掻くと、ふと…後ろから帽子を取られた。そして零れた驚愕の声。私は取られた帽子を追って後ろを向く。そして見えたのはこの世の物と思えないものを目の当たりにしたかの様な、恐怖に歪んだ兵士さん達。私から取った帽子も落として、身を小さく震えさせていた。




「魔道士、アネモネ…っ!!貴様、モンスターだな!!!」

「──」

「我らの王を騙し、この城へ潜り込むとは……っ!!」




本当に、私の考えは甘かったんだね。兵士としての訓練を受けている彼らが、顔を恐怖で染めている。私が黒髪だと知った瞬間、私に刃を向けて来る。…世界がコマ送りのように見える。私は、今どの辺りに立っているんだろう。意識が何処かへ飛んでいく様な感覚。今倒れたら、死ぬかゴルベーザさんかナッツに助けられるかのどちらか……あぁ…いっそ、固まってしまえばいい。




「──…ユタ…」




不意に呼ばれた声が届いて、静かに戻った感覚と、霞んだ視界。そして目の前に見えた石。血の気が引いた。そこには、石化した兵士さん達が居たから。




「───…そっか…OK、分かった…」




本気で、恐怖で、私を殺そうとした顔。石になってもはっきりと分かる。そんな顔しないで。私だって怖いんだ。




「な…なんという魔力……っ!」




ベイガンの声が聞こえて、兵士さんが私の帽子を取った訳が分かった。




「ベイガン。あんたか。」

「な、何の事です。」

「あんたが2人に帽子を取れと指示をしたんだな。そうだよな!」

「私が指示したと言う証拠もないのによくそんな事が言えますね?」

「でなけりゃ何故こいつらが私の帽子を取った!!!」

「ッ………!」




自分でも驚く程傷付いてる。気持ちは冷静の筈なのに、言葉が酷く荒れる。とても泣きそう。一変した私の雰囲気に圧倒されたのか、ベイガンは押し黙る。

私は、勢いのままに言葉を続けた。




「てめえが私怖いようにさ、私だって怖いんだよこんな訳の分からん巨大な魔力!!!人を化け物みたいに見んだったらまずてめぇがなったらどうだよ!!!!!」




そう言い捨てて、3人に背を向けて王の間を出ようと歩いた。不意に私の背丈程の杖を生成して、それで石となった兵士さんの足元突き、「デジョン」と心の中で唱えて吸い込まれたかどうかも見ないまま、そのまま出て行った。




「なんと恐ろしい…!王!あの者を早急に城から」

「お前、俺よりヒデェ事言いやがるなァ」

「、…!?」

「…アネモネを傷付けた罪は重いぞ。」

「っな…なにを…」



次→◇傷心◇
*******************

やらかした。

☆更新日14/5/21

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