犠牲の花

□◇結晶◇
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◇結晶◇





「……」




朝の柔らかな日差しと、聞き心地の良い鳥のさえずりで目を覚ました。…此処は昨日来たばかりのバロンの、私の部屋。昨日のホワイトアウトはなんだったのだろう…?と考えながらゆっくりと身体を起こす。




「起きたか。」




突然飛んできた言葉に驚いたけど、すぐにゴルベーザさんだと分かった。




「ん…おはよう、ゴルベーザさん。」




彼に向き直り、朝の挨拶。ゴルベーザさんは流石にもう見慣れた甲冑姿。私の挨拶に「あぁ、おはよう。気分はどうだ」なんて、やっぱり嬉しいなあ…っ 私は笑って「大丈夫!」と返事をしてベッドから立ち上がった。




「それにしても、こんな朝からどうして私の部屋に居るんですか?」




彼の隣に立って、率直な疑問を投げ掛けた。




「…少々、お前を狙う輩が居るようでな。」




「見張りだ。」と言った。…それで辻褄が合うのが昨夜の白。これが霧なら、ミストドラゴンのものだと言う可能性は0ではない。…気になるなぁ…でも、私を狙うのが何かを聞いたところで、彼は答えてくれないんだろうなぁ…なんて考えていると、ゴルベーザさんが部屋から出て行こうとする。それをあれ?と思った私を見て




「今は見張らずとも問題はない。とりあえず顔を洗ってこい。着替えて王の間へ行くといい。」




あ、はい──…なんかお気を使わせた感がするが…そして気付く。私はクソのような起き抜けと寝顔を見られたのか。死にたい。なぜ真っ先に気付かないんだ私よ。そして百面相をしながらのそのそと顔を洗いに行き、さっさと着替えていると、使用人さんが朝ごはんを持ってきてくれた。別に急ぎじゃないしご飯は食べていいよね。




***





あの後大変な事に気付いた。私食べるの遅い。…って事で小走りで城の中移動中。別にゲームでも大体そんなもんだろうし、いいよねー




「はー、と。着いた着いたー…」




ゆったりと扉を開けようとすると




「陛下!!」

「ふぁッ!?」

「!?」




いや、正直すぐ誰か分かったけどどうしようもないよね?!普通にめっちゃビックリしたのもあるしコイツらも押されてるから!?こっちも背に押されて尻餅付いてしまった…




「!お前は…!」

「確か、魔道士アネモネ…!」

「あ、あぁ…はい、アネモネです…」




何か返事したら若干首傾げられたんだけど。普通に2人して「?」ってなったよな?確実にイメージと違ったっていう反応ありがとうございます!!!!もそっと溜息を吐きながら立ってホコリをはらっていると




「君は…女の子…?」

「あ、そこから?」

「?」

「これから王と謁見か。」

「謁見…なのかは分からないけど、うん。会いに行くね。」




答える度に2人が「?」ってなるから私言葉遣いからしてめっちゃ浮いてるんだと思うの。此処で2人と話しててもしょうがないし「じゃあ行くね」って軽く手を振ってドアを潜った。

スタスタと入って行くと兵にザッと立ちはだかれ、また驚いて少しよろめいた。けどすぐにバロン王に化けたナッツが外してくれる。




「来たな、アネモネよ。ベイガン、お前達は下がっておれ。」

「お言葉ですが陛下。アネモネ殿は得体が知れません。お2人だけで話されるのは危険かと。」





堪らず吹き出した。私得体が知れない奴だって。そうだよね考えなくても分かる事か!ベイガンは当然笑う私が気に食わない様でキッと睨みを利かせて言った。




「何が可笑しいのです!」

「あ、いや…っ 、すいません…!何でもなi 、くふっ」

「ふざけているのですか?アネモネ殿!ちゃんとお答えなさい!」




笑う私を見兼ねてかナッツが仲裁してくれる。はー、笑った笑ったぁ。なんか、ベイガンまだ魔物じゃないのね?こんな反論するなんて。




「アネモネは信用の出来る人物じゃ。力はまだ安定していないものの、クリスタルを預けるには申し分ない。」

「!クリスタルをアネモネ殿に預けるのですか!?」

「全てはクリスタルの為。それにはアネモネの力が必要不可欠だ。」

「!?」




クリスタル預かるとかなんですの初耳でござる…私にそんな力ないとか色々突っ込み所多いんですがそれは置いておきます。何処からともなく聞こえたゴルベーザさんの声に、兵達は姿を探し辺りを見回す。するとゴルベーザさんはゆっくりと姿を現した。甲冑の音に振り向いた兵達は彼の存在感に圧倒されてか、剣に手を掛けた。斬り掛かり兼ねなかったから軽く口を開いた。




「ゴルベーザさんだよ。バロン王が呼んでたの。」

「!王が…?!」

「剣に手なんか掛けちゃって、失礼じゃない?」

「、く…っ」

「もちろん、私だってお客さんだし?そんなに疑われる要素はないんじゃない?」

「っ…、わかりました…っ」




ちょっと嫌味ったらしく言ってやると、悔しそうに唇を噛み締めて引き下がりました。イエーイ☆だって私悪くないしー?(笑)




「王。アネモネにクリスタルを。」




ベイガンが一瞬「王に命令をするなど…」な感じな顔してます。と言うかもうこいつら出てかなくていいのね?どうでもいい事を考えながらクリスタルを持ったナッツが来いと手招きするので、玉座まで小走り。




「さあ、受け取れアネモネ。」

「私より他に安全な所に保管してはいかが?」

「理由は他にもあるのだ。」

「他?」

「まあを持てば分かる。」




実はお前も知らないんじゃないのかと言いたいのを堪えて、言われるがままにクリスタルを受け取ろうと、手を触れる直前。




「!?」

「クリスタルが…!?」




光って、消えた。

私もナッツも驚いて手渡しする手を引っ込めるのを忘れる程。気付いた時にはクリスタルはない。2人して自分の掌とお互いを交互に見るくらいには。ゴルベーザさんも驚いた様子を見せているからこの反応は異常じゃない筈。




「…っ魔道士アネモネ!クリスタルを何処へ消し去ったのです!!!」

「!? えっ え、どこって…」

「惚けても無駄です!さあ!薄情なさい!!!」

「あああもう知るかヴォケ!!!!!んな事こっちが聞きたいわ!!!!!!!」




ベイガンが怒鳴るからこっちも叫んでやったよ!クリスタルまじどこ!!!




《───私はここ。》




私の声に答えるかの様に、温かな声が聞こえた。





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