犠牲の花
□◇室外◇
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◇室外◇
「なーっつん!」
「っどわ!」
暇で仕方なかった為、部屋からでて塔の中をフラフラしていると、視界の端にのそのそ面倒そうに歩くナッツを見付けた。ので、そっと近寄って勢いよく甲羅の上にダイブした。ナッツは当然ご立腹。
「てめえ…なにしやがる!下りろ!」
「ヒマよー、ナッツん構えー」
そうナッツの甲羅の上で寛ぎながら足をパタパタさせる。さも面倒臭そうにナッツはそのまま歩いた。アネモネ様だから邪険に扱えなくてイライラかなー?ごめんねー☆
「ったくよォ…こっちは仕事だってのに、アネモネ様は呑気なこった!」
「する事ないんだもんさー」
「ああ、そうだろうよ。おめーはあくまで客だからな。」
ナッツの投げやりな「客」と言う言葉に、ちょっとムカッとしたので遊ばせていた足で少し蹴った。
「おめーはホンットにやる事がガキだな!」
「ふーんだ!」
私のじゃれあい程度の攻撃なんてあんた達は1も喰らわないでしょ!って頬を膨らませる。ナッツはもううんざりだって顔。それでも私を振り落とさない辺り、ナッツはツンデレよね。ツンギレ?まあどっちだっていいけど。要は本当は優しいんだよねって事さ。
「あ、そうだナッツ。」
「なんだよ。」
不意にナッツの仕事の事が気になって、ダメ元で言ってみた。
「私もバロン行きたい。」
すると、ピタリと止まって私を甲羅の上からころんと落とし
「誰が連れてくか!!」
「落とさなくてもいいじゃないか!」
くわっと怒鳴られた。私もちょっと対抗して声を張る。
「ねー、ちょっと見て回るだけでいいからさー!」
スタスタ私を引き離そうと早歩きするナッツを追い掛けながら粘る。
「やなこった!てめえはさっさと部屋戻りやがれ!」
「今此処から?!結構遠いよー!?」
「自業自得だろうが!そもそも部屋から出んじゃねぇよ!」
だって私モンスターと遭遇しないからいいと思って…驚きのエンカウント率の低さだよ。それに私このゾットの塔から出られないんで、部屋からも出られなかったらそれ保護じゃなくて監禁だよ…
「とにかくゴルベーザ様の許可ナシに連れ出すなんてこたぁ出来ねえ!」
「えー…」
「そんなに出たきゃゴルベーザ様に直談判でもしに行け!」
んな事言ったって…私ゴルベーザさんと会った事ないんですよ…チラリとも見掛けない。
「…は?」
「会った事ないよ?」
「…マジかよ…」
「うん。私結構会ってみたいんだけどねぇ」
ナッツはもうとっくに会った事あると思ってたみたい。そりゃゴルベーザさんの命で私を保護してるんだからそう思って当然っちゃ当然か…
「もー!こんな所に居た!」
「っぶふ」
とそこに、不意に聞こえたシアの声。そしてその直後に走る衝撃。…シアに突進と言う名のハグを頂きました。
「アネモネ様ってばまた1人で出歩いてぇ!危ないって言ってるのに!」
「ナッツも居たよー」
「あら、居たのカイナッツォ。」
「何でそのチビが見えて俺が見えてねぇんだ。」
溜息を吐いてナッツが疲れた顔をしだした。まあ大きさ的には私が見えないのが普通だって事なんだけど。
「何言ってるの?あんたとアネモネ様じゃ存在感が違うわ!」
「いや私ないだろ存在感…シア大丈夫…?」
そう言ったらシアに私の存在感と言う名の魅力を語られた。…ないから…シア。私、存在感も魅力もね、ないから?貴方には一体どう私が見えているんだ…あ、ナッツは付き合ってられないとこそこそ離脱して行った。まぁあいつ仕事あるしね。とりあえずシアの力説も聞き飽きたので再び切り出してみる。
「ねーシア。」
「なにかしら?」
「あのね、ちょっと外出てみたいの。」
キョトンとするシア。少し考えてから、首を横に振った。
「アネモネ様のお願いでも、それはダメね…ゴルベーザ様のお許しがない限り、貴女を外には出せないわ。」
「んー…そっかぁ…」
「ごめんなさい…出してあげたいのは山々だけど、私達としては、アネモネ様の身が一番大切なの。」
「一番…?」
それは言い過ぎだろうと苦笑いすると、シアに「じきに分かるわ。」なんて意味深なお言葉を頂きました。まぁ今考えてみた所でどうしょいもないだろうから考えないでおこう。
***
「お呼びですか、ゴルベーザ様。」
「…頃合いだ。ミシディアのクリスタルを手に入れるのだ。」
「はっ」
「…しかし、それによってアネモネが弱るやも知れん…クリスタルを手に入れるまでの数日、バロンに住まわせろ。」
「?!」
「警護は抜かるなよ。」
「は、はっ!」
次→◇城内◇
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突然の外出許可(制限有)
☆更新日13/12/23