犠牲の花
□◇貴方◇
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◇貴方◇
目を丸め、数回瞬きをすると一拍を置き、貴女は言った。
「私は貴方の嫌う人間の弱みの塊みたいなものだよ?…それでも?」
それを何故貴女が知っているのか、私は検討も付かない。…だが不思議と“この方ならば当然だ”と感じていた。
「いえ、貴女は十分にお強い。ただ、それを貴女ご自信が認めていらっしゃらないだけです。」
確かに彼女は脆く弱い。だが、それを理解し弁えている。私の嫌う人の弱さは、貴女にはない。
***
──この塔にアネモネを保護して早10日。
「…。」
未だ、彼女と顔を会わせては居ない。
「ゴルベーザ様。」
「…様子はどうだ。」
「随分と落ち着いていらっしゃいます。」
会ってはならぬ気がしていた。
「皆にも慣れ、時折笑顔も見られます。」
「…そうか。」
初めから知っていたのだ。毒花が誰かなど。
「…宜しいのですか。」
黒い瞳に黒い髪など、この世界にそうは居ない。
「くどい。」
…何故
「ユタさんの髪、キレイだよね。」
「そう?」
「うん!黒い髪なんて初めて見た!」
「えー?黒髪なんて珍しくないでしょう?」
「ユタさん以外見た事ないよ?」
「うっそぉ?いっぱい居るよー?」
「え…!じゃあユタさんの住んでる所って、強い魔力持った人いっぱい居るの?!」
「えっ」
「え?だって黒い髪の人は凄い魔力があるって、父さんが言ってたよ?」
「あ、いや…でもセオドールくん、それは個人差があるし…ないと思うなぁ…」
「えぇー?」
何故あの時のままなのだ。
「───ユタ……」