犠牲の花

□◇敵陣◇
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泣き疲れたのだろうか、いつの間にか眠っていた。瞼がとても重くて痛い。考えるのも動くのも嫌で、口からあぁ…と零れた。文字通り身体を引き摺って、部屋にある洗面所へと歩いた。鏡に映し出された自分が、あまりに惨めで笑ってしまう。




「…もう…なにしてんだろ…」




洗面台に手を置いたまま、ずるりと座り込んだ。つらい。とてもつらい。たった一日。たった一日の一場面なのに、まるで全てが背中にこびり付いているいるかの様に近い。やめて。ごめんなさい。怖いよ。




「ごめんなさい……」




怖くてまた涙が出てくる。でもこれ以上泣いてもどうにもならないし迷惑だ。立ち上がって、蛇口を捻る。顔を洗う。…別に、何をする訳でもなく、ただ顔を洗って、少しでも気持ちと瞼の腫れを落ち着かせて、何も考えないように、ベッドに座った。横に倒れて顔を伏せた。動きたくない。何もしてないのにもう何もしたくない。あぁ…前にもこんな重たい気持ちになったことあるなぁ…あれはなんてくだらない事だったんだろう?今の状況から見たら些細すぎて自分はなんて脆いんだろうと自己嫌悪。この世界の人は強い。本当に…




「…なんで…わたし…」




なんで、なんでと、震える声がぽろぽろ零れた。どうして私が、どうしてこんなに弱くて脆くて使い物にならない私がこの世界に来たのか。それが何も分からないうえ助けてくれた国を裏切った。あんなに信じていてくれているのにも関わらず。守りたいと証した裏切り。…全て自分の我が儘じゃないか。あぁ、なんて醜い人間だ。歯を食い縛って、起き上がった。布団に伏せている自分が馬鹿らしい。今が何時か全く分からないこの部屋に居ても仕方がない。少しこの部屋から出たいと思った。立って、ドアを開けた。




「あ。」

「!」




開けた途端、聞こえた声にピタリと手が止まった。でも、相手は四天王の誰かだろうと思って恐る恐る扉を開けると、其処には少し戸惑った様子のスカルミリョーネが居た。




「ア、アネモネ様…ご気分の方は、大丈夫なのですカ?」

「え…?」

「ルビカンテから、随分と落ち込まれているト聞いていましたので…」




…?スカルミリョーネが優しい…不思議で私の中で色々と焦点が合っていなくて首を傾げていると、彼は少し慌ててまず自己紹介をしだした。それが少しおかしくて、小さく笑う。すると彼は気恥ずかしそうにするけど、どこか安堵した様にも見えた。




「あの、アネモネ様。」

「なに…?」

「何かありまシたら、遠慮なく我ら四天王にお申し付け下さイ。ゴルベーザ様から、貴女をお守りするよう命じられていルので、アネモネ様に害のある者は居ませン。」




ゲームとは違う、彼のどこか辿々しい言葉遣い。頑張って話しをして、私を元気付けてくれようとしているのか、なんだか彼が可愛らしく見えてくる。素直にありがとう、とお礼を言うと、照れ臭そうに少し俯いた。そこへ、ルビカンテがやって来た。ルビカンテはスカルミリョーネと話をしていた私を見て少し驚いた様子を見せて口を開いた。




「アネモネ様。宜しいのですか…?」




これは気分は大丈夫なの?とかのよろしい、かな




「うん。スカルミリョーネとお話して、元気でた。」

「!」




顔こそよく分からないものの、スカルミリョーネが嬉しそうな雰囲気を浮かべた。結構分かりやすい人なんだね。ルビカンテも安堵の表情。




「スカルミリョーネが…そうでしたか…」

「…では、私はこれデ…」




そこから去ろうとするスカルミリョーネだけど、私は短く引き止めた。彼が不思議そうに私を見ると、私は少し笑って




「また、お話したいな。」




そう言うと、始めは唖然とするスカルミリョーネだけど、嬉しそうにいい返事をくれた。




「アネモネ様。」

「ん、」

「あのまま貴女がどうかしてしまってはと、心配をしていました。…本当に安堵致しました。」

「…ねえルビカンテ。」

「はい。」

「ちょっと、外の風に当たりたいな?」






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