犠牲の花
□◇始動◇
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◇始動◇
私がエブラーナに来てから数週間が経ちました。なんかエッジと話すテンポが合うようで、毎日コントやってる気分です。…と言うか、あれ…エッジが私の先輩といろんな意味でそう変わらないから話してて違和感が…おま…仕事しようぜ…(遠い目) だってここFF4だぜ…私部外者だぜ…?違和感ないのが違和感だわ。
「なーユタ。そういや聞いた事なかったけどよ。お前戦えんのか?」
エッジの修業風景を見てて、休憩がてらにふと聞かれた。そんな事言われても私が戦えるなりだと………あぁ、この世界じゃ関係ないか…
「ううん。武器持った事ない。」
「はぁ!?魔法は?」
「あー…あるんじゃないかなー…?」
「ねぇんだな。分かった。」
「一応ありますー 使った事ないだけ」
「だったらないのと同じだバカ。」
はぁ、と呆れた顔で溜息を吐かれた。
「そもそも突然なーに。それって普通結構初めの方で聞くもんでしょ?」
「ハナからお前が戦えるなんて誰も思ってないんだろうよ。」
「じゃあ何故聞いたし。」
私がムッと口を尖らせて見せると、エッジはらしくもなく口篭る。なんだろうと少し首を傾げてもう一度問うと、顔を背けて言った。
「お前、故郷見付けたら帰るのか?」
「え?」
突拍子もない事言われました。故郷とか、帰るったって…ねぇ…?
「故郷かぁ…どうかなー。」
「帰りたくないのか?お前の親父やお袋は心配してんじゃねぇのか?」
「此処にあったら、そうかもねー。」
エッジを置いてきぼりにして、ゆっくり立ち上がって伸びをする。小さく「おい」って聞こえたけど気にしない。…清んだ空を見て、たかが数週間。でも着実に、確実に遠ざかっていく世界を懐かしく思う。
「多分、帰れないから。」
「ユタ…?」
「帰ろうとしても無駄なんだと思う。」
「お前、」
「ああ、邪魔なら出て」
「邪魔じゃねぇ!!!」
「出てくけど?」と言おうとしたよりも早く、エッジが立ち上がってそう叫んだ。めっちゃビックリした…思わず硬直だわ…いや、あの反応早すぎてどう言う事だ。私そんな真面目に答えてなかったのに対してエッジ大真面目すぎて。
「邪魔じゃ、ねぇっ…!」
「え…えー…っと………?」
「っただなぁ…!最近、どうもお前が居なくなるような気がしてしょうがねぇんだよ!」
とんでもない豆鉄砲食らった。この子どうしたの。始めて見るくらいの表情、なんか…ほんとに不安なんだなって、感じた。
「帰れないなら此処に居ろ!今日からお前の故郷はこのエブラーナだ!」
「お、おう…とりあえず、落ち着け…?」
すごく嬉しい事言ってくれてるんだけど、結構な混乱状態でそれしか言えなかった。
***
「…はぁ…寝れない。」
それからまた静かに日が経っていき、エッジの心配も消えたかなと言う頃。今度は私の胸騒ぎ。また嫌な夢をよく見るようになったし、全く…なんだって言うんだろうね、これは。溜息を吐いてベッドから起き上がって窓に身を乗り出して空を見上げた。そして見えたのは2つの月──…それで、私…すごく大変な事を思い出してしまった。
「─……増えてる…魔物……平和な、エブラーナ…」
───ストーリーが…始まって、ない…?
いけない。私の胸騒ぎこれだ。こんなにこのエブラーナに居てゴルベーザ、ルビカンテが来てないと言う事は、いつこの国が炎に包まれて廃城になっても可笑しくないんだ。いけない…怖い…
「どーしよ…」
何があっても、何が来ても、私は無力で何も出来ない。私にはエブラーナを守る力なんて到底ない。…心底自分に愛想が尽きる。窓の縁に伏せて、目を閉じた。と思ったら頭に何かが当たった。落ちてきた、じゃない。当たった…当てられた?ぐっと頭を起こして後ろを向くと、エッジが酒瓶持って立ってた。頭に置いたの酒瓶かよ。当のそいつは相変わらずの軽々しさで「よう」と短く挨拶。
「…あんたはホントよく人の部屋に入り込むね。」
「お前が鈍いんだよ。」
「寝れねぇんだろ?飲もうぜ」と私にグラスを押し付けてさっさと注ぐ。
「私飲むって言った?」
「いいじゃねぇか寝酒くらい。」
そう言い窓縁に酒瓶を置いて壁に寄り掛かって飲みだすエッジ。仕方ないから注がれた分だけでも飲もうとグラスに口を付けた。
「お前さ。」
「ん?」
「本当に何処にも行かないか?」
またそれか。…でも、今は「行かない」と断言出来なかった。
「どうしてまた?」
だから、答えずに自然に聞き返した。
「…お前が居なくなる夢見た。」
「…」
「それで起きた。」
それに続く言葉もなく、グラスの酒を飲み干して新たに注ぐ。
「お前は?」
「私は…」
私は、夢見が悪くて眠る気がしない。何かに何かを急き立てられてて胸が苦しい。
──…怖い…──
「分からない。」
言えない。
「単に眠れなかっただけかな。」
恐怖を誤魔化す為に、残った酒を飲み干した。けど、また注がれた。
「何で勝手に注ぐのよ。」
「何でじゃねーよこの嘘吐きが。」
…はぁ、そりゃああからさま、か。じっと軽く睨まれたので、睨み返す。
「エッジの癖に。」
「ユタの分際で。」
同時に顔を背けて、同時に吐き捨てた。それで、また顔を見合わせて、小さく笑った。おかげて、緊張が少し解けた。グラスに視線を落として、そっと口を開いた。
「この間エッジさ、私の故郷はエブラーナだーとか、言ったでしょ?」
「っ、お…おう…」
「あれね、結構嬉しかったよ。ありがと。」
突然の「ありがとう」にエッジはむず痒いのか、顔を背けてそわそわ。それに釘を刺すけどごめんね?
「…だから、気を付けて。」
本当に釘を刺したかのようにピタリと止まって、不思議そうに私を見た。…助けたいんだ。
「何かが、来る気がするの。」
「何かが、来る?」
「そう…強大な力を持った、何か。…それが近付いてる気がしてしょうがないの。」
「…それで、お前起きてたのか。」
「…そうかもね。」
言葉の後に酒を飲んでグラスを置くと、頭にぽすんと掌が乗ってそのままくしゃっと撫でた。
「エブラーナには俺が居んだ。変な心配すんじゃねぇ。」
こっちを向いてはいないものの、どんな顔してるかは何となく分かる。想像して少し笑って頭に乗った手を取って「そうだね」と撫でると、照れたのか手を払い除けて寝る!と窓縁にグラスを置いて私のベッドにダイブ。おい。
「ちょっと、あんた部屋戻って寝なさいよ。」
「めんどくせえ。」
「おま…」
さっきちょっと見直したのがバカみたいだわ。残った酒を流し込んで窓縁にグラスを置いてエッジの肩を揺する。
「ちょっと、じゃあせめて布団被りなさいよ!」
「お…添い寝許可か?」
「バーカ!んな訳ないでしょ!こっち来たら蹴り落とすからね。」
そう吐き捨てて、ベッドの端に潜って目を閉じる。けど、沈む背中側に目を開ける。
「なあ。」
「あんたさ、酔ってるでしょ。」
「あんぐらいで酔うかよ。」
「どうだか…」
「背中合わせるだけでいい。」
「絶対こっち向くでしょ。いーや。」
「早く寝ちゃいなさいよ」と言って頭まで布団を被ると流石に諦めたのか素直に離れて布団を被った。
「…なあ。」
「…なに?」
「…守る、からな。絶対。」
「………ばか。」
次→◇襲来◇
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まだエッジ夢のつもりはないんだけどなー?