犠牲の花

□◇保護◇
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◇保護◇





─身体が重い。私は今まで何をしていた…?




「  、  !」




意識の遠くで誰かが呼んでる。目を開けるのが億劫だ…眠い訳ではない、酷く身体が重くて、だるい。




「おい!起きろ!!」




聞こえなかった声が私の耳に届いて、私を揺さぶる。それに乗じて重たい瞼を開ける。




「起きたか…?」




そうして、ぼんやりとした私の視界に入ってきたのは天井…では、なく。




「…」

「大丈夫か?」




白髪の男性。……あ。見た事ある方ですね。




「お前外でぶっ倒れてたんだぜ。覚えてるか?」

「えと…」

「ん?」

「どいて、くれますかね…?」




貴方は何でその外でぶっ倒れてた人の肩をがっつり掴んで起こしたんですかね?これハタから見たら誤解されるわ。彼は軽く『ああ、悪ぃ悪ぃ』と言って退いてくれて私は重たい身体を持ち上げる。所々、針を刺したような痛みが動くのを邪魔する。若干起きにくそうにしていると、予想外にもその人が手を貸してくれた。




「傷、まだ痛むみてぇだな。ちょっと待ってろ。おーい!ガキ起きたぜー!」




私こいつこんな気の利く奴だなんて思ってなかったんだけど…?…と言うか誰がガキだ!! そいつは部屋のドアを開けて誰かを呼ぶとまた隣に歩いてきて、ベッドにぼすんと座った。…あんたさっきまでそこの椅子座ってなかったか。




「今白魔道士呼んでやったから、すぐ来るぜ。」

「はぁ…」

「なんだ、どうした?」

「…あの、ここは…?」




彼の特定の為に聞くと、まず『はぁ?』と返ってきた。ぶん殴りたいですね。




「お前此処が何処だかも分からねぇのか?!まさか記憶喪失とかじゃねぇよな!?」

「そんな大袈裟な…」

「いいか?よっく聞けよ!此処はエブラーナ!ちなみにこの部屋は看護室だ。今、丁度出払っちまってたけどな。」

「エブラーナ…」

「おうよ!そんで、俺がこの国の王子エッジ様よ!」

「エッジ…さ、ま…?」




知ってはいてもな?こいつ似合わなすぎだろ…おかしいって…あとこいつほんとよく喋りやがる…私が当然腑に落ちない顔で首を傾げると彼はまた噛み付いてくる訳ですよ。




「おまっ 信じてねぇな!?」

「…んー…」

「このガキ…っ」

「若。そのくらいにしなされ、彼女は怪我人ですぞ?」




お爺様と白魔道士様ナイスタイミングですわ。ありがとうございます。あ、その椅子白魔道士さんがお座りになるんですね。だから若(バカ)退いたんですね。




「お嬢さん、ご気分はいかがですかな?」




じい様は何故いらしたのだろう?起きた私を見に来ただけかしら…?あっ やだ白魔道士さんかわいい…




「まだ、少しぼんやりしてますけど…大丈夫です。」

「おお、それはよかった!」

「でも傷はまだ痛むらしいぜ。早いとこ治してやんな。」

「はい、若様。」




…でも、不自然ですごく気になってる。私、なんでこんなに怪我してるんだ?覚えてる限りじゃ、夢であったあの正体不明の生き物にタックルした事くらい…タックルかましただけでは絶対こうはならないし…あ、アイツから受けた毒?毒なのかどうかも実際よく分からないけど…他は…そんな傷付くような事はしてない。…不思議でたまらない。謎だ…




「しかし、目が覚めて本当に良かったです。」

「え?」

「ふふっ 若様がとても心配なさっていたので。」




傷を治してくれながら白魔道士さんの悪戯な発言でその若様が動揺しております。私は結構『あ、そうですか』で済むくらいのリアクション。この白魔道士さん…さてはSだな…




「目が覚めた、と言うよりはエッジさんに起こされた感じですが…」

「そりゃ様子見にきたらなんか魘されてっから!」

「魘されて…?」

「何か、よくない夢でも見なすったか?」




バカを他所に、白魔道士さんとじい様が心配をしてくれる。…でも、魘される程の夢は見てない…と、思う




「…夢は、見ていた気がしますが…よくは、分かりません…」




まあ妥当な返事を返しておく。あの長い夢を話すのはとてもたるい。それに何処からが夢だったかよく分からないし…あの少年、セオドールくんや…不思議なクリスタル。あれは本当に夢だったのか…全て実際にあった事のようだから、とても不思議な気分だ。




「お嬢さん、そなたは何処へ向かわれる途中でしたのかな?」

「え、あ…」

「最近はどうも魔物の数が増えて1人では無理があるじゃろう。多少なりとも遠い所でも、我らがお送りしますぞ。」

「しっかし、お前みたいのがよく生きてたよな。普通ならとっくに死んでるぜ?」




しまった…この問いに、私はどう答えればいいんだろう。




「…えっと…」

「どうした?」

「その……わ、から ない…」




もうこれしか言う事ない(白目)どうすりゃいいんですかねこれ…3人共ギョッとしてるじゃないか。




「分からないってお前やっぱり記憶喪失か!?」

「なんと!?」

「大変…!あぁ、心配なさらないで!貴方は私達エブラーナの民がお守り致しますわ!」

「こうしては居れん!若!王に掛け合いに行きますぞ!」

「おう!そいつの事頼むぜ!」

「お任せください!」




………え、え?!何、何なの!?え?!待ってよエブラーナの人って大体このテンションなの!!?おかしい!意味が分からないよ!私の喋る隙はどこですか!?ねえ!?待ちやがれーーー!!(※ユタ、心の叫び)




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