償いの宿命
□命の重み
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深夜、私は突然目を覚ました。ひどく胸騒ぎがして、いつも私に寄り添って居る筈の2人が居ない事に気付くのにも数秒もいらなかった。
『サガ…!カノン…!?』
嫌な予感がする。
自分の心臓の音がうるさい。
呼吸が乱れる。
私は部屋から飛び出て家主の寝室を力いっぱい叩いた。
すみません、起きてください、大変なんです、お願いします、弟が何処かご存知ありませんか。
何度も叩いて、大きな声で呼んでいると、遂に扉が開いた!と思った途端…言葉よりも先に、とてもとても機嫌の悪い足が私を蹴り飛ばした。
『っこの、うるせぇんだよこんなクソ夜中によお!一体何時だと思ってやがんだこのクソガキがあ!!!』
転がした私を何度も何度も足蹴にして、睡眠を妨害した私を、憎しみを込めて踏み付けた。
『こちとらてめぇらみてえなクソガキ相手にイラッイラしてんだ!面倒なことすんじゃねえ!!!』
『、おとうとが…弟、が、居ないんです…!何処か…何処にいるか、ご存知ありま、せんか…!?』
『あぁ?てめぇの小汚ェ弟何ざ売っ払ったぜ!ったく、あんな奴ら金の足しにもならねえ!』
『───……』
言葉も出なかった。
他?何処?2人は何処?
私は放心状態だった。
そして走って行こうとしたら腕を捕まれた。
『ここから出よう何ざ考えてくれるなよ?俺ぁおめえは唯一の儲け口だと踏んでんだからよぉ?』
『な、に…』
『ガキにしちゃあきれーな顔してっしよぉ?物好きに貸し出しゃいい金になるぜぇ!』
乱暴に捕まれた頬。
下品な声で笑う男。
彼にとって私は金。
人という認識は無。
金にならなければ…
胸に湧き出る感情は
…熱く、黒く、重く…
── あ あ
汚 ら わ し い 。
そう思って、次に気が付いた時には…その人は不自然に倒れ込み、目を開けたまま息絶えていた。
だけど、私は何も感じなかった。
それが、さも当然のように冷静で、ただサガとカノンに会いたいと…手を握って祈った。
2人が危険な目に遭っていませんように、2人とまた、無事に会えますように…
私が静かに祈りを始めると、徐々に大地が振るえ、それはやがて激しい地響きを掻き鳴らしながらあらゆる地域で地割れ、土砂崩れ、地盤陥没などが起こり人々を脅かし、人間の命は次々と失われた。
『どうか…どうか弟に会わせて…私のかけがえのない、大事な弟……どうか、この汚れた街を捨てて清らかな場所へ…』
これ以上ここに居てはいけない。
この街は、人間の心が死んでいる。
ここに居ては弟の心までもが汚れてしまう。
…ああ、2人の弟を守りたいが為に、こんなにも大勢の人間達を死に追いやってしまった事…どうか、どうかお許しください。身勝手な私の感情で大地をこんなにも崩してしまった事…どうか、どうか………
『サガ…カノン…おいで…私の所に帰っておいで………私と、私と一緒に、遠くに行こうね…』
祈り、光を纏い、私は弟を連れてそこではない、小さな村の近辺へと…消えていった。