A M O U R -アムール-

□普通は要らない
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ある喫茶店の隅。







「……。」








其所で黙々と絵を描き続ける人影。




彼女の名前は天梨 李朱。




彼女は今、





不登校生である。







「(…あ。失敗した。)」





そうペンを止めると、素早くページを捲り、またサッサッと描き始める。





「はぁ…(疲れてきた…)」






息を吐き、小さなクロッキー帳とボールペンを置き、残っていたコーヒーを飲み干した。



そしてまたペンを手に取ると、今度はゆっくりと絵を描いていく。






「(…格闘タイプはルカリオかエルレイド水は…やっぱりマリルとかかな……あ。ミロカロスも良い。)」





サラサラと、慎重にポケモンを描き込んでいた。





「(…学校サボって何やってんだか……あ。飛行タイプは…どうしよう…やっぱりペラップ?いや、ムクホーク、良いな…)」





そう、李朱はゲーム好き。好きなのはポケモンに限らない。





「(…ポケモンはいいなぁ…自由で……ま、トレーナーさんに捕まっちゃうけど。)」





ふぅ…と溜息を吐くと、クロッキーを閉じて、ボールペンと一緒に鞄の中に突っ込んだ。



そして、その鞄を肩に掛けて空いたカップを片付け、その喫茶店から出た。





「(…まだ居れば良かったかな…そろそろお金なくなってきたんだよね………かと言って、今更学校入りたくないし…どうしよう。)」





そう考えていると、ひんやりと冷たい風が李朱の頬を撫でた。



すると気持ち良さそうに、一度深呼吸をする。





「(冷たくて気持ちい…このまま歩いてよ。)」





と、そのまましばらく歩く事にした。



が、






『っ馬鹿!何してるのよ?!』



『何って・・・暇だから覗いてんだけど…』


『止めなさい!今すぐその穴閉じなさい!!』


『いてっ!痛いっ!!分かった、分かったから殴んなよ!!』





何か言い争う声。


そっと辺りを見回しても人が喋っている感じではない。





「…………。」





李朱は不意に空を見上げると………





「Σっ?!;;」





其所には、パックリと空が裂け、その中にはお馴染みの伝説のポケモン。





「………………。」





見てはならぬ物を見た気がした。





『ッぐぉ………!』


『アンタは目を離すとすぐこれよ!!』


『ちょ…っ…おち…つけ………』


『仮にもアンタは神なのよ!?だったらこんな事ばっかしてないでちょっとは………!!』




「あの…パルキア逝ってますよ。」





思わず声を掛けてしまった。





『そうよ!一度逝けば……………って!見付かったじゃない!アンタの所為よ!どうしてくれるのよ!!?』




「首踏み付けてた癖によく言うね。」





然り気無くツッコミを入れると、李朱はディアルガによって穴に引き摺り込まれた。




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